ニワトリ熱中症被害が拡大 県内養鶏場1万8千羽死ぬ

 厳しい暑さの影響を受け、石川県内で8月、約1万8千羽のニワトリが死んだことが4日、県への取材で分かった。記録的猛暑だった5年前の同じ月より3千羽多く、死因の多くが熱中症とみられる。県によると、県内で流通する鶏卵や鶏肉は県外産のものも多く、現時点で小売価格への影響はみられない。ただ、飼料高騰が続く中、養鶏場にとって暑さ対策の負担は重く、県畜産協会は「長引けば中小事業者の経営を圧迫する」と懸念している。

  ●130万羽を飼育

 県畜産振興・防疫対策課によると、県内では約130万羽のニワトリが飼育されている。このうち、8月1週目に約4千羽、2週目に約8千羽、3、4週目に約3千羽ずつの死亡が確認された。病死するニワトリは週当たり1~2千羽のため、県は大半の死因が熱中症とみている。

 今夏と同じく猛暑に見舞われた18年は8月を中心とした5週間で約1万5千羽が死んだが、今年の8月は4週間で5年前の数字を上回った。昨年8月との比較では1.5倍だった。

  ●産卵率が低下

 加賀市分校町の養鶏場「ヒラオカ・ポートリー」では7月以降、約200羽が死んだほか、産卵率が例年より5~10%低下する影響が出た。平岡宏康代表(46)によると、経営への影響は小さく、値上げなどの予定もない。

 ただ、暑さ対策にかかるコストの負担は大きい。扇風機や噴霧器の導入費用に加え、稼働させるための電気代も必要になる。平岡代表は「屋根のトタンを断熱効果があるものに張り替えたいが、費用対効果を考えると、どこまでできるか分からない」と話した。

 県によると、鳥インフル対策との両立に悩む業者もいる。鶏舎の暑さ対策では風通しをよくして気温上昇を抑えるのが一般的だが、密閉性が求められるウイルス対策とは相反する部分が多いためという。

 県畜産協会の担当者は、猛暑が長期化した場合、「大規模な養鶏場は対策を講じる余力があるが、中小は難しい」と指摘。ニワトリの死亡がこの先も増えれば経営に与える影響が大きくなるとし、「早く収まるよう願うしかない」と語った。

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