カレーと陶器の人気店、神戸の「ころは」が三木に移転 古民家を改装「小旅行気分を味わえる場所に」

器と喫茶の店をオープンした南方浩二さん、あゆみさん夫妻=三木市口吉川町大島

 畳敷きの和室に、美しい数々の陶器が並ぶ。アンティークな喫茶スペースで、木枠の窓に目をやれば、稲穂が風にそよぎ、ゆったりとした時間を味わえる。築100年以上の古民家を改装し、陶器類の展示販売を行う喫茶店「ころは うつわと道具と喫茶室」が、三木市口吉川町大島にオープンした。3月中旬まで、神戸市垂水区でカレーと陶器類を販売していた人気店。なぜ三木に移転したのだろう。(長沢伸一)

■自慢のカレーや器、築100年余の建物改装オープン

 「器を好きな人がじっくりと見て楽しめる、こだわりの店を作りたかったんです」

 「ころは」を経営する南方(みなかた)浩二さん(42)、あゆみさん(40)夫妻は笑顔で話す。

 8年前、2人はJR垂水駅前に「カレーとうつわ ころは」をオープンした。1階がカレー店。2階は陶芸家のあゆみさんが担当する展示販売スペースとしていた。

 脱サラして浩二さんが始めたカレー店は、研究し尽くした料理が評判となり、雑誌やテレビで紹介される人気店になった。小規模な店で開店前から行列ができ、終業まで人が出入りするせわしない日々だったという。

 ただ、あゆみさんは複雑だった。「2階の展示をじっくり見てもらいたいけど、お客さんにゆっくりしてもらえない。1階と2階で正反対な感じだった」

 郊外への移転を考え、古民家探しを始めた。いくつか回ったところで3年ほど前、知人の紹介で訪れた、三木市口吉川町大島の民家にくぎ付けとなった。

 明治の終わりから大正の初めに建てられたとみられ、築100年以上。母屋と離れが渡り廊下でつながった木造平屋だった。「離れを見た時にベストな場所、ここしかないと思った」(あゆみさん)

 折しも新型コロナウイルスが世界的に大流行。カレー店は休業や営業時間短縮を余儀なくされた。一方、陶器類販売は全国からネット注文が殺到するなど好調だった。

 神戸市北区出身の2人にとって、三木は身近な場所でもある。「どこでも商売はできる。自分たちの理想を実現させたい」と移転を決断。昔の大工技術の粋が込められた建物の雰囲気は残しつつ、周囲の景色を楽しめるよう段差を取り払うなどリフォームを施した。

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 古民家は約200平方メートル。母屋は、右半分が喫茶スペース、左半分が陶器や台所用具の展示販売スペースになっている。

 古びた木製の扉を開き、右手に向かえば味わいのある木製のいすとテーブルが来客を迎える。落ち着いた空間で喫茶のほか、自慢のカレーなど食事も楽しめる。

 左手には湯飲みや小皿、茶わんなどがずらり。渡り廊下を通って離れに入ると、展示は美術館のよう。緑の自然に囲まれた空間が、皿の白さを引き立てる。

 離れでは企画展を毎月開く予定。喫茶スペースでは地産地消を目指し、三木産の食材を取り入れる方針だ。あゆみさんは敷地内で陶芸工房を準備しており、体験イベントなどの実施も視野に入れる。

 浩二さんとあゆみさんは「三木に移ってきて良かった。新鮮な空気やゆったりした雰囲気を楽しめる、小旅行気分を味わえる場所にしていきたい」と話す。

 午前11時~午後4時半(ラストオーダーは午後4時)。月、火曜定休。臨時休業あり。ころはTEL0794.88.1010

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