「満タンで1万円」ドライバーため息、高値続くガソリン 全国平均186円台、生活や輸送業を直撃

価格高騰で販売数量が減るガソリンスタンド。この日この店舗ではレギュラーが1リットル当たり186円だった=1日午後、神戸市東灘区田中町1

 レギュラーガソリンの全国平均小売価格が186円50銭と過去最高値を更新し、高騰している。兵庫県内も、全国平均は下回るが、183円10銭と高値が続く。円安の進行と原油高騰のほか、政府が価格抑制のため石油元売り会社に支給している補助金の段階的な縮小などが背景にあり、値下がりの兆候は見えない。政府は補助を拡充する方針を示したが、県内の消費者や運輸業の関係者は先行きを懸念している。

 「先日、満タンにしたら1万円を超え、値上がりを実感した」。神戸市中央区のガソリンスタンド。社用車に給油する同区の男性会社員(47)がため息をつく。「普段はマイカー通勤だが、公共交通機関を使ってなるべく乗らないようにしている」という。

 ガソリンの全国平均価格は16週連続で値上がりし、2008年以来15年ぶりに最高値を更新している。価格は、輸送費や価格競争などで地域差があるが、兵庫県も14週連続で上昇している。政府は、ガソリン価格を抑えるため22年に始めた補助を今年1月から段階的に縮小してきたが、9月末の期限切れを前に、年末まで延長するとともに段階的に拡充すると表明した。

 「満タンにする人が減った」。県内の給油所運営業者は口をそろえる。金額指定で購入し、給油回数も減らすドライバーが多く、販売数量は減少している。

 菱華石油サービス(神戸市長田区)の内芝知憲社長(62)は「原価がどんどん上がって利益率が下がっていく」と嘆く。大英石油(同市兵庫区)の三宮サービスステーション(同市中央区)の林由美子所長は「高騰の一因でもある(ロシアとウクライナの)戦争が終わってほしい」と話した。

 影響はタクシー業界にも広がる。タクシーは液化石油ガス(LPG)を燃料にする車が多いが、ガソリン車も導入している県内の大手タクシー会社は「ガスに比べ、ガソリンは値上がり幅が大きい」。「これ以上高騰が続くと、ガソリン車の購入を見直さなければならない」と価格の推移を見守る。

 また、神姫バス(姫路市)はグループ全体で月間約170万リットルの軽油を使う。費用増は、補助金の効果で4~6月期は前年同期比1%強で済んだが、補助金がないと月約2千万円になるという。同社は「路線バスの運賃は上げにくい。短期的に値上げできる仕組みが必要」と訴える。

 運送業界は、新型コロナウイルス禍からの回復局面でのガソリン高騰に頭を悩ませる。製造業関連の貨物を扱う国田運送(加西市)の国田泰宜社長(39)は「車を使わないと需要をつかまえられないが、現状では採算が取れない。対策の取りようがない」と困惑顔だ。

 ガソリン価格について、日本総合研究所関西経済研究センターの藤山光雄副所長は「今の水準から今後大きく上がっていく可能性は低いが、しばらくは同程度の高い水準が続くだろう」と話した。(赤松沙和、大島光貴、大盛周平)

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