アスベスト給付金、支給対象限定は不当 死亡男性の義姉ら訴え、賠償求めて国提訴 神戸地裁

建設アスベスト給付金制度を巡り、申請対象者の範囲外として給付を受けられないとして国家賠償請求訴訟を提訴した女性(左)=6日午後、神戸市中央区多聞通2

 建築現場での電気工事に従事し、アスベスト(石綿)による中皮腫で亡くなった兵庫県内の男性=当時(78)=の義姉らが6日、国に計1430万円の損害賠償を求めて神戸地裁に提訴した。国の給付金の支給対象者を本人や近い親族に限るのは「不条理」と主張している。

 健康被害の程度に応じて550万~1300万円を支給する国の給付金制度は2022年に施行された。本人、配偶者、子、両親、兄弟姉妹、孫、祖父母が請求できる。

 訴状によると、男性は1966年から一人親方として電気工事作業に就き、19年10月に悪性胸膜中皮腫を発症。20年1月に死亡した。同年9月に労災認定され、22年2月に男性の兄が給付金に関係する手続きを申し込んだ。

 兄は同年6月に給付金請求を申請したが、約2カ月後に亡くなった。兄以外に請求可能な対象者がおらず、国は無効として手続きを終了した。

 義姉らは民法上の賠償請求権を受け継ぐが、給付金制度の対象外とされる。提訴後の会見で義姉らの代理人弁護士は支給決定までの期間も問題視し「迅速な支給決定をせず決定前に男性の兄が死亡し、遺族が国に賠償を求めて提訴せざるを得なくなった」とした。

 男性のめい(54)は「制度で不足する部分を改善してもらいたいと思い、遺族として何とかしないといけないと思った」と話した。

 厚生労働省は神戸新聞社の取材に「訴状が届いておらず、コメントできない」としたが、現行制度は「救済と迅速化の観点で合理的に整えられた」と話した。

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