南方系マダニ、東北の離島に 山形大・小峰助教ら確認、致死率高い新興感染症を媒介

東北地方の離島で見つかった南方系のマダニ類を説明する小峰浩隆助教=鶴岡市・山形大農学部

 山形大農学部の小峰浩隆助教(33)=生態学=らの研究グループは東北地方の離島で、致死率の高い新興感染症を媒介する複数の南方系マダニ類を見つけた。従来知られていた地域より北方だった種もおり、地球温暖化などを背景に東北に進出しつつある状況を確認。この離島にはマダニの主な宿主とされる大型哺乳類はほとんどおらず、鳥類を介して分布が拡大している可能性も示唆された。

 南方系のマダニ類はもともと東南アジアや南アジアにおり、近年は西日本でも見つかっている。日本紅斑熱や重症熱性血小板減少症候群(SFTS)といった新興感染症を媒介するとして拡大が懸念されているものの、その拡大状況やメカニズムの実態は不明な点が多い。

 国立感染症研究所によると、SFTSの報告数は近年、全国で増加傾向にあり、今年は8月27日までに108人となり、昨年の同時期を上回っている。県によると、本県の場合、1999年の調査開始以降、SFTSの感染例は確認されていない。

 今回、南方系マダニが見つかった離島は風評被害の懸念から公表していない。2021年6~8月に草むらなどから9種類145匹を捕まえ、南方系は5種類を発見した。このうちヤマアラシチマダニとツノチマダニは新潟県、タカサゴチマダニは静岡県、カクマダニ属の種(和名未確定)は埼玉県が北限だった。

 離島内にはマダニの重要な宿主とされるシカやイノシシはおらず、陸上からの移入も考えにくい。畜産による人為的な動物の移動もないため、300種類超の渡り鳥が立ち寄った際に持ち込んだとみられる。ただ、マダニの幼虫はほとんど見つかっておらず、離島内で繁殖している可能性は低いという。

 小峰助教は「西日本に比べて南方系マダニ類の個体数は少なく、感染症のリスクは高くないと思われる」と説明。「今後はどの鳥がどこからマダニを持ち込んだかなど基礎情報を集め、将来的には感染症のリスク低減に役立てたい」と話した。

 森林総合研究所(茨城県つくば市)との共同研究で、成果はダニに関する国際学術誌の7月27日付に掲載された。

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