「京アニは光の階段、自分の人生はあまりに暗い」青葉被告を駆り立てた非情コントラスト

青葉真司被告

 京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)放火殺人事件で、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第6回公判が14日、京都地裁で開かれた。前回審理に引き続き被告人質問が行われ、青葉被告が、ガソリンをまいて火をつけるギリギリの瞬間まで何を考えていたのかについて詳細に語った。

 被告人質問でのやりとりによると、青葉被告が第1スタジオ前の路地に到着したのは、事件発生時刻14分前の午前10時16分。被告はこの路地で凶器となるガソリンを携行缶からバケツに移し替えた。要した時間はわずか1分だった。

 残りの13分間は何を考えていたのか―。

 被告人質問で検察官にこう問われた青葉被告は「自分の半生を考えていた。京アニは光の階段をのぼり、それに比べて自分の人生はあまりにも暗い。コンビニ(でのバイト)も郵便局(勤務)も小説も全て実を結ばずに終わった」と答えた。

 ガソリンに火を放つ寸前まで、挫折を繰り返す自らの半生と飛躍をとげる京アニを重ね合わせていたという青葉被告。強烈なコントラストはその目にどう映ったのか。

 「自分のような悪党でも小さな良心がどこかにあって、それが正しいのかと考える部分はあった」

 青葉被告は事件を起こすことにためらいがあったことを明かす一方で「自分の20年間はどうしても暗い。やっぱり、ここまで来たらやろうと思った」と放火に踏み切った当時の心境を語った。

 検察側は5日の冒頭陳述で、青葉被告は事件3日前の2019年7月15日に京都へ入り、事件現場となる第1スタジオを下見した上で、事件前日までにホームセンターでガソリン携行缶を購入したと説明。犯行動機について「小説のアイデアを盗作されたと一方的に思い込んで京アニを恨み、社員も連帯責任だと考えた」と指摘していた。

 公判で弁護側は、青葉被告が事件を起こしたのは「被告の人生をもてあそんだ『闇の人物』への反撃だった」と主張。事件当時の青葉被告は妄想性障害の影響で心神喪失か心神耗弱の状態だったとして、無罪か刑の減軽を求めている。検察側は、妄想に支配された末の犯行ではなく、「筋違いの恨みによる復讐」と指摘。被告には当時、完全責任能力があったとしている。

 起訴状によると、青葉被告は2019年7月18日午前10時半ごろ、京都市伏見区の京アニ第1スタジオに正面玄関から侵入し、ガソリンを社員に浴びせてライターで火を付けて建物を全焼させ、屋内にいた社員70人のうち36人を殺害、32人に重軽傷を負わせた、などとしている。

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