鉄道警察隊が目を光らす「要注意人物」とは 痴漢パトロールに同行してみた

警察官の存在をアピールするため改札付近に立つ鉄道警察隊員(草津市渋川1丁目・JR草津駅)

 駅や列車で乗客の安全を脅かす痴漢や盗撮などの性犯罪。鉄道の利用者が多くなる新学期に合わせ、滋賀県警は6日から15日までを「列車等における痴漢等被害防止期間」とし、犯罪撲滅のための啓発に取り組む。卑劣な犯罪を見逃すまいと、日夜目を光らせるのが鉄道警察隊(鉄警隊)だ。陰ながら乗客の安全を守る隊員たちに同行した。

 4日午前8時すぎ。県内で最多の1日平均約2万7千人が乗車するJR草津駅(滋賀県草津市)は、通勤客のほか、夏休みが明けて登校する大勢の中高生が行き交っていた。混雑する2階コンコースの片隅で、制服姿の鉄警隊員3人が往来する乗客にくまなく目を向けていた。

 「階段やエスカレーター近くに止まる車両のドア周辺には乗客が密集しやすく、特に注意している」

 ホームに降りた隊配属2年目の河原田直樹警部補(37)が説明してくれた。同じ場所に長時間とどまったり、反対側ホームへ不自然に移動したりする人物は要注意だという。

 午前9時ごろ、隊員3人は米原行きの新快速列車に乗り込んだ。「警乗」と呼ばれるパトロールで、走行中の車両を手分けして巡回していく。特急列車や新幹線に乗ったり、私服姿で乗客に紛れたりもするという。

 先頭車両を見回っていた配属4年目の隊員が、2人掛けシートを指さし「窓側の席は逃げ場がなく、痴漢の被害を受けやすい」と話した。また混雑している場合にはドア付近で被害に遭いやすくなるとされる。

 鉄警隊は、滋賀県警本部の地域課に所属し、駅や列車内で起きる痴漢や盗撮、暴行などの犯罪抑止と取り締まりを任務とする。県内を走るJR、私鉄全線が対象となる。

 鉄警隊によると、今年7月末までに県内の鉄道施設内では痴漢や盗撮といった県迷惑防止条例違反が18件あった。ただし「把握している件数はあくまで氷山の一角」。痴漢や盗撮などの性犯罪は被害者が誰にも相談できず、泣き寝入りするケースも多いためだ。

 

 もしも痴漢被害に遭ったら…。県警は、スマートフォンの画面に「痴漢です!助けてください」との文字が表示される「デジタルフラッシュヘルプカード」の活用を呼びかけている。県警ホームページから保存できる。

 新たな対策にも乗り出している。

 「一人で悩まず、先生や家族、警察に相談するようにしましょう」。6日朝、北大津高(大津市仰木の里1丁目)の放送室で、河原田警部補が校内放送で全校生徒に呼びかけた。これまでは駅でちらしを渡すなどして啓発してきたが、生徒に直接訴えようと、1校ずつ訪問することにした。放送を聴いた3年の女子生徒(17)は、「混んでいる車両は避けて、不審な人がいたら離れるようにしたい」と話した。

 鉄警隊長の小澤大輔警部(46)は「痴漢や盗撮は被害者に耐えがたい苦痛を負わせる重大な犯罪。7月には盗撮を取り締まる新法も施行されたので、引き続き厳しい目で取り締まっていく」と力を込める。

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