「林檎華憐歌」歌い話題に、あれから11年 「ビートまりお母」尾崎さん(青森・弘前市)

林檎華憐歌を歌う尾崎さん。ブランクを感じさせない歌声を響かせた
尾崎さんが「林檎華憐歌」を歌う様子を紹介する東奥日報の記事

 2012年、息子で歌手として活動するビートまりおさん(42)=東京在住=が作った和風なロック曲「林檎華憐歌(りんごかれんか)」を歌う姿が動画投稿サイト「ニコニコ動画」に投稿されると「歌詞がいい」「こんな親子憧れる」と多くのコメントが寄せられ、動画は約190万回(6日時点)再生された。「ビートまりお母」の名前で一躍有名になった青森県弘前市の尾崎順子さん(71)は、忙しかった当時を振り返り「新しい世界を見られた」と懐かしんだ。

 曲はリンゴや桜、ねぷたまつりなど、弘前の情景と故郷への思いを歌う楽曲。話題は全国に広がり、多い時は1週間で4件の取材を受けイベントにも出演した。千葉県の幕張メッセで行われたライブで6千人を前に歌い、憧れの小林幸子さんと一緒に歌う機会も得た。

 当時は、40年続けた店を閉じたり義母が亡くなったりと、悲しいことが立て続けに起こった時期だった。「全てをなくしたと思ったら新しい世界が目の前に現れた。人生は不思議だなと思った」という。

 3年ほどで話題が落ち着くと、夫の安夫さん(79)とカラオケを楽しんだり、地域の歌唱大会で歌声を披露したりしていた。

 そんな大好きなカラオケも、ここ数年は新型コロナウイルスの感染を心配し、行かなくなった。「高齢だしマイクは他の人も使うから…」。そう話す表情はどこか寂しげだった。

 取材の最後に「林檎華憐歌を聞かせて」と頼んでみた。尾崎さんは一瞬戸惑った様子だったが、曲が始まると、すっと立ち上がり拳を握りしめ、張りのある歌声を響かせた。手の動きや間奏時の語りなど、パフォーマンスは10年ほど前の姿そのもの。キラキラした目で「やっぱりいい歌だね」とほほ笑んだ。

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