国重文「旧弘前偕行社」青森県弘前市が取得検討へ 運営法人が譲渡申し出

弘前厚生学院が所有管理している旧弘前偕行社と庭園「遑止園」=21日午後

 2024年度末で閉校し運営法人を解散する弘前厚生学院(青森県弘前市御幸町)は21日、弘前市に対し、所有・管理している国重要文化財「旧弘前偕行社(かいこうしゃ)」を無償譲渡、偕行社の庭園「遑止園(こうしえん)」を有償譲渡したいと申し出た。法人解散に伴い、維持管理を担えなくなるためで、市側は取得に向けて検討する意向を示した。

 同日、鳴海春輝学院長らが市役所を訪れ、歴史的価値のある建物を観光コンテンツなどとして保存・活用するよう求め、出﨑和夫副市長に要望書を手渡した。出﨑副市長は「弘前にとって大事な施設。どのように後世に引き継いでいくか関係機関と協議し、市としても積極的に関わっていく」と語った。

 鳴海学院長は「軍都から学都への移り変わりを示す歴史的価値がある建物と土地。市民に活発に活用されてほしい」と述べた。

 旧弘前偕行社は同市に設置された陸軍第八師団将校らの社交場として、1907(明治40)年に建設された。ルネサンス風様式を基調とした木造平屋建ての洋風建築で、明治期の名匠・堀江佐吉の最後の作品。2020年に大規模な保存修理を終えた。大正天皇が皇太子時代の1908(同41)年に弘前を訪れ偕行社に宿泊した際、庭園の美しさを賞し「遑止園」と命名した。

 市は今後、遑止園の土地評価額などを精査し、取得費用の予算化を検討する。具体的な利活用の方向性は未定。

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