敷くだけで避難所区分け 七尾の松本さんが敷物開発

敷くだけで避難所を区画に分け、通路を確保できる(一部合成、松本さん提供)

 高齢化により避難所生活で持病が悪化するなどの「災害関連死」の増加が懸念される中、敷くだけで短時間に避難所を区分けでき、寝袋にもなる敷物を、七尾市後畠町の元畳職人、松本隆さん(65)が開発した。備蓄しておけば被災者が詰め掛ける前に避難所の居住空間やトイレへの通路を確保し、寒さもしのげるという。松本さんは「助かる命があるなら1人でも助けたい」と普及を目指す。

 敷物は幅4.4メートル、長さ7.2メートルのポリエステル製で、国際基準の75%に当たる1区画1.62畳(2.64平方メートル)を12区画分確保できる。区画がひと目で分かるよう一松模様にした。

 折り紙のようにコンパクトに折りたため、広げるのも簡単で、8月に崎山地区コミュニティセンター(旧北星小)で行った実験では2人一組で1枚広げるのにかかった時間は32秒、4人なら3分弱で体育館500平方メートルに10枚分(120区画)を用意できる。

 施設内に備蓄しておくことで、陣取り合戦になりがちな避難所をいち早く区分けし、女性や高齢者のゾーニングや、通路を確保できる。厚さは4ミリあり、ブルーシートに比べて保温性が高いことも確認し、寝袋としても使えるようにした。

 東日本大震災や熊本地震では1日当たりの災害関連死の割合は発生後1週間が最も高かったとされる。松本さんによると、冬の避難所では寒さによる低体温症も懸念され、疲労やストレスも大きい。すぐに敷けて適切な居住空間やトイレへの通路を確保でき、寒さを防げる敷物は命を守ることにつながるという。

 東日本大震災を機に防災士の資格を取得した松本さんは、熊本地震で避難所に畳を無償で届けるボランティアに参加。畳よりも簡単に広げられる敷物の必要性を強く感じた。家業の畳店を退職し、防災敷物の企画・開発を行う「ほっと。松本」を設立。7年がかり完成させた敷物は「おまもりぶくろ」の名称で今年、商標登録した。

 防災敷物は、10月11~13日に東京ビッグサイトで開催される国内最大級の「危機管理産業展」に出展し、受注生産を始める。松本さんは「支援物資が届くまでの72時間に関連死を防ぐためにも、敷物は水や食料と同じくらい重要な要素となる。被災者を守る敷物を全国に広げたい」と話した。

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