陶芸への間口広げたい 160年の伝統、那珂川の藤田製陶所 ピンク色の陶器開発

ピンク色の陶器を作っている悠平さん

 【那珂川】築窯160年の伝統を持つ小砂(こいさご)の藤田製陶所で、ピンク色に染められた陶器が来店客の目を引いている。藤田真一(ふじたしんいち)代表の長男悠平(ゆうへい)さん(31)が今年7月ごろ、「渋さとは真逆の物を作ろう」と作り始めた。悠平さんは「伝統も大切にしつつ、陶芸に触れる入り口を広げていきたい」と意気込んでいる。

 悠平さんは約10年前、実家で営む陶芸の道に進んだ。東日本大震災で実家の登り窯が壊れるなどの被害を目にし、「何か力になれないか」と思ったのがきっかけだった。

 小砂焼は、茶色に金色をちりばめたような「金結晶」が代表的な色合いとされる。ピンクの陶器を思いついたのは、取引先の雑貨店業者との会話がヒントだった。製陶所の店内に茶色系の陶器が多いことを指摘され、「見慣れすぎていて感じられなかった。色を変えることで雰囲気も変わるのでは」と思い至った。

 もともとあった釉薬(ゆうやく)にピンクの染料を入れることで、ピンク染めができるようになった。一方、「色の濃さやほかの色との配色など、まだまだ試行錯誤中」という。

 ぐい飲みや小鉢、コップといった品を数百個作った。「ピンク出たんだ。かわいい」などと若い女性らから好評で、インスタグラム上では、ピンクの陶器を載せると反応が多いという。

 悠平さんは「金結晶には金結晶の良さがあるが、若者や子どもにも陶器を1度手に取ってほしい。緑や黄色も構想中です」と笑顔を見せた。

ピンク色の陶器を作っている悠平さん

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