藩政期の茶室よみがえる 金沢・平木屋染物店の白蓮庵修復

茶室「白蓮庵」の茶席開きで客をもてなす平木教授(左)=金沢市片町2丁目

  ●加賀茶道伝える場に

 創業250年の老舗、平木屋染物店(金沢市片町2丁目)にある茶室「白蓮庵(びゃくれんあん)」の修復が2日までに完了し、現代によみがえった藩政期の茶室がお披露目された。茶室は染め物の作業場の2階に設けられ、今後、月釜を開くなど活用を進める。茶人だった曾祖父から「白蓮庵」の号を受け継ぐ平木孝志金沢学院大特任教授は「加賀茶道を伝える場に育てたい」と話す。

 平木屋の建物は藩政末期に再建されて以降、現在も染め物業が営まれる。往時から明治期にかけての古い建築様式が残り2021年に市文化財に指定された。

 平木教授の曾祖父にあたる3代弥平が「白蓮庵」を号し、家業の傍ら紫(むらさき)遠州流の茶道をたしなんでいたが後代に受け継がれず、茶室は戦争を経て、長く使われないままになっていた。文化財指定を機に建物の修復を行うことになり、昨夏から工事を進めた。

 6畳の茶室は椰子(やし)の床柱や網代(あじろ)天井など3代の好みを反映した作りとなっている。修復作業中に藩政期の色壁の痕跡が見つかり、当初と同じ青壁に復元。腰張には平木教授の弟で、能楽師である職人の豊男さんが用意した幕末の謡本をあしらった。ふすまは加賀藩御用絵師・佐々木泉景のびょうぶを再生して新調した。

 2日行われた茶席開きでは、平木教授が床に平木屋拝領の13代藩主前田斉泰筆の軸を掛け、加賀蒔絵(まきえ)の香合、九谷庄三の茶碗など加賀の茶道具でもてなした。客には藩の初代御茶堂頭を務めた市井友仙(いちいゆうせん)の菩提寺(ぼだいじ)である法華宗本因寺の相澤一龍住職、県茶道協会の髙來宗吾監事らが招かれ、幕末の城下町の風情を味わった。朱壁の待合には加賀盆石や古文書、文房具などが飾られた。

 市内の茶室の利活用が課題となる中、平木屋では新たな茶室で月釜を開くなどして加賀茶道を発信する。作業場の改修も終え、年内にも染め物業も同所で再開する予定で、8代目の平木良尚さん(38)は「染め物体験に加え、茶の湯や盆石など本物の文化を体験できる場として、外国人ツアーなどを受け入れたい」と話した。

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