肘折の映画「雪の詩」47年ぶり発掘 デジタル化、山形国際映画祭で上映

「雪の詩」の一場面。巡査役を演じた早坂谷雄さん(手前右端)ら多くの住民が出演している(原版提供・国立映画アーカイブ)

 大蔵村の肘折温泉で撮影された映画「雪の詩」のネガフィルムが47年ぶりに発掘され、鮮明なデジタル映像としてよみがえった。1970年代の風景や美しい雪景色とともに、エキストラ参加した多くの住民が映る貴重な記録だ。山形市で5日に開幕する山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映される。

 「雪の詩」は波多野勝彦監督(1936~2017年)が手がけ、1976(昭和51)年に製作された。不注意による火事で家族を亡くした男と、雪国で出会った少女の交流を軸とした物語だ。肘折歴史研究会がうわさで聞いた映画の存在を調査。肘折と関わりの深い映画祭理事・藤岡朝子さんの協力で、国立映画アーカイブにフィルムがあることが判明した。その後、遺族と連絡がつき、デジタル化が実現した。

 映画には銅山川や金山橋、温泉街、当時の肘折小中学校などが映り、肘折こけしやおさいどの様子も登場する。幅広い年代の住民が出演する中、せりふのある巡査役として存在感を放っているのが、そば店「寿屋」2代目店主の故早坂谷雄さんだ。孫の隆一さん(45)は「まるで役者みたい。せりふで『りゅういちさん』と言う場面があり、生まれる前に自分の名前を口にしていて不思議な感じがした」と話す。

 失われた風景や懐かしい音声も刻まれている。研究会の斉藤栄輝さん(36)は「劇映画ではあるが、地元民にとってはまさにドキュメンタリー。雪の美しさも印象的で、貴重な作品だ」と語る。今後、肘折での上映会も開く予定という。

 映画祭では、11日午前10時15分から山形市民会館で上映。斉藤さんと早坂さんがトークで登壇する。波多野監督が同じ年に製作した観光PR映像「雪の肘折温泉」も上映される(9日・やまぎん県民ホールイベント広場)。

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