住民が作る「地区防災計画」 県内策定108件、目標達成厳しく 認知度や人材不足など影響か

 地域住民が主体となって災害時の避難対応などをまとめる「地区防災計画」の県内策定数が、今年3月末時点で計108件にとどまっていることが3日までに、県や市町への取材で分かった。県は2023年度に180件、24年度230件、25年度280件の目標を掲げているが、現在のペースではいずれの目標も達成は難しそうだ。計画の認知度が低いことに加え、高齢化などによる地域の人材不足、コロナ禍での地域活動の停滞も影響しているとみられる。

 同計画は、阪神や東日本大震災で住民同士のつながりが非常時に力を発揮したことなどから、14年施行の改正災害対策基本法で盛り込まれた。主に自治会や自主防災組織が作成し、地域の実情に合わせて避難方法や避難所生活をどう送るかなどをまとめる。

 自治体が作る「地域防災計画」よりもきめ細かなエリアで定められ、住民同士が話し合って作成することにより防災意識が高まるといったメリットもある。ただ、策定は義務ではなく手間もかかるため、多くの市町で進んでいないのが実情だ。

 県は19年度から2年間の計画策定促進事業に乗り出し、24市町でモデル地区1カ所を選び、各地区で計画が策定された。しかし、このうち佐野市や大田原市など9市町はその後に策定済みとなった計画はなく1件のままだ。

 栃木市や小山市など8市町も2件のみで、県内市町の7割が2件以下と低迷している。現在、策定中の地区があるか聞いたところ、13市町がゼロと回答した。最多は宇都宮市の28件で、次いでさくら市13件、足利市11件など。

 各市町からは「高齢化や人手不足、災害リスクの差によって地域に温度差がある」(大田原市)、「地区防災計画そのものの認知度が不足している」(栃木市)、「計画策定の主体となる自治会役員の任期が短い」(塩谷町)などの課題が挙げられた。

 専門的知識が必要になることも障壁となっており、県は専門家の派遣費用を補助している。県消防防災課の担当者は「当事者意識がないといざというときに迅速な行動が取れない恐れがある。停滞している計画策定を支援していきたい」と話している。

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