呪縛から解放へ第一歩に 女性の生き方、宇都宮で昭和女子大総長・坂東真理子さんが提言 「無自覚」の偏見、自覚を

アンコンシャスバイアスにとらわれない生き方について講演する坂東さん=9月22日午後、宇都宮市内

 「女性は控えめがいい」「男性はいざという時に頼りになる」-。個人の能力や適性を無視した「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」が日常にあふれている。こうした偏見に縛られない生き方のヒントを紹介する公開講座「女性はいつも“Be Ambitious”~アンコンシャス・バイアスを超えて~」が9月22日、宇都宮市内で開かれ、ベストセラー「女性の品格」でも知られる坂東真理子(ばんどうまりこ)昭和女子大総長が女性の生き方について提言した。

 坂東さんは内閣府男女共同参画局の初代局長を務め、在職中の2003年に「20年までに指導的地位における女性比率を30%まで引き上げる」という目標値を掲げた。だが現状は目標にほど遠く、世界経済フォーラム(WEF)が今年6月に発表した「ジェンダー・ギャップ(男女格差)指数」で日本は146カ国中125位と過去最低を更新した。

 「17年あれば女性の経験と能力はしっかり育てられる。そう考えたが、数年先のことしか考えない政治家は本気で取り組んでくれなかった」と振り返った。

日常にあふれ厄介

 アンコンシャスバイアスの分かりやすい事例として挙げたのは、女性蔑視発言で国内外から強い批判を浴びた森喜朗(もりよしろう)東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会長の辞任問題。「彼は『当たり前のことを言ったまで』と悪気がない。偏見とも思っていない」

 相手を軽視するつもりはなく、親切心に起因することすらあるだけに、厄介なアンコンシャスバイアス。「『私は偏見なんて持っていない』という人がほとんどでしょう。しかし、無意識の決め付けは日常生活にたくさんある」と述べ、「無自覚」を自覚するよう促した。

女性自身も克服を  

 坂東さんは、社会にはびこる偏見が女性自身に植え付けられて可能性の選択肢を狭めてしまうことを危惧する。

 「責任ある地位に就くと風当たりが強そう」「成功するには優れた能力やカリスマ性がないと駄目」と思い込み、「私なんかが…」「女だから無理」などと過少な自己評価をする「インポスター症候群」に陥りかねない。「思い込みで機会をつかもうとしないのは本当に残念。女性にも男性にも個人差がある。思い込みをなんとか克服することが大事だ」と訴えた。

 現在、同大付属のこども園では通園付き添いの6~7割が父親という。「私たちの世代では特別な現象だったが、現実は少しずつ変わっている」とした上で、時代によって価値観を変える必要性を指摘。「アンコンシャスバイアスという呪いに自分自身が縛られていることに気付くことが、思い込みからの解放への第一歩になる」とエールを送った。

 公開講座には約180人が参加した。

アンコンシャスバイアスにとらわれない生き方について講演する坂東さん=9月22日午後、宇都宮市内

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