「熟成肉」はダメ、「しぐれ煮」はOK 返礼品ルール「基準よく分からない」不満続出

熟成肉の返礼品を開発するためクラウドファンディングで寄付を募った京丹後市のホームページ。約7千万円集まり、熟成庫を整備したが、他都道府県産の肉は使えなくなった

 総務省は10月のふるさと納税のルール改正で「地場産品」に関する基準も厳しくした。返礼品として認められる地場産品に当たるかどうか曖昧なケースが増えているためで、他府県や海外産の熟成肉や精米は扱えなくなり、セット品は地元産が全体価格の7割以上を占めなければならなくなった。京都府内では12市町村が返礼品の見直しを余儀なくされ、「国の判断基準がよく分からない」との愚痴も漏れる。

 「他府県産の熟成肉でも『しぐれ煮』は返礼品として認められる。『熟成』も加工であることに変わりはないのに」。2022年度の寄付総額が95億700万円となり、全国7位に入った京都市。担当者はルール変更に首をかしげる。これまでは原材料が他府県産でも市内で「加工」したとみなされれば、返礼品として認められていたが、今回の改正で「熟成」と「精米」は除外され、市は10月から熟成牛肉を返礼品から外すことになった。

 京丹後市は、2月に府外産の国産熟成肉の取り扱いを始めたばかりだった。市内のスーパーが1月に完成させた専用の「熟成庫」で熟成させ、整備費は市がクラウドファンディングで集めた約7千万円のうち、約2800万円を補助金として支出した。市は「設備もできてこれからという時期だったが、仕方ない。今後は府内産の肉に切り替えていくしかない」と言葉少なだった。

 セット品のルール改正の影響を受けた市町村も。長岡京市は市内産のアルコール消毒液とマスクのセットを扱っていたが、マスクが兵庫県産だったため扱いをやめた。担当者は「返礼品の先には事業者がいる。年度内の契約変更となるので、総務省はもう少し早く知らせてほしかった」と困惑する。亀岡市は京野菜の詰め合わせをすべて亀岡産の野菜に変えた。南丹市は地元産の米と他地域で製造された混ぜご飯のもとのセットを取り下げた。

 笠置町は8月、町のPRキャラクター「笠やん」をあしらったボールペンやトートバッグを詰め合わせたグッズを返礼品から外した。地域との関わりが乏しく、広く一般に販売されている商品に自治体名を加えたり、パッケージだけを変えたりする手法が認められなくなったためだ。このほか、福知山市、宮津市、京田辺市、木津川市、宇治田原町、南山城村も返礼品を見直した。

 総務省は「熟成肉と精米は海外や他県の産品を一時保管しただけのケースが特に多く、地元で付加価値を生み出したとは言い難い」と説明する。セット品のルール改正は「地元経済の活性化というふるさと納税の本来の趣旨で運用していくため」と強調する。

 仲介サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクによると、9月の寄付額は「値上げ」前の駆け込み需要で前年比約3.7倍に増加した。同社の担当者は「今後は、電子ポイントやイベント体験チケットなど、梱包や配送費など経費の負担が少なく、今回のルール改正の影響を受けにくい返礼品が注目されるだろう」と予測する。

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