●南砺福野高、挿し木育成
南砺市の城端別院善徳寺で今月、腐朽により伐採された推定樹齢500年以上のシンボルツリー「別院の大杉」の「2世」を次代に残そうと、南砺福野高農業環境科は19日までに、大杉の枝を挿し木する方法で根を生やすことに成功した。スギの老木は生長しにくいとされる中、挿し木500本のうち11本に根が生えた。2、3年後をめどに城端別院で「大杉2世」の苗木を植樹することを目指す。
大杉は城端別院の山門横にそびえ、長年、地域住民から親しまれてきたが、朽ちて幹が空洞化し、倒壊の恐れがあるため、苦渋の決断で今月初めに伐採した。伐採前には大杉への感謝を込め、約100人が参加して法要を行った。
城端別院は「大杉2世の培養と植樹」などを掲げ、「大杉のいのちを次世代につなぐプロジェクト」を展開。南砺福野高の島田誠治教諭(63)に相談し、生徒が授業で「大杉2世」の苗木育成に取り組むことになった。
2、3年生の生徒14人が6月から▽枝の挿し木▽枝から出た新芽の組織培養▽種から発芽した実生苗の栽培-の3種類の方法で挑戦したところ、挿し木の手法で発根に成功した。
大杉から採取した枝500本を発根促進剤に浸し、プランターに植え、夏場は枯れないよう森に移して温度や水を管理した結果、9月に11本が根を伸ばした。現在は鉢に移し、栽培を続けている。
県森林研究所によると、老木は細胞分裂の力が弱く、挿し木をして根が伸びる確率は5~10%。樹齢500年以上の木では、挿し木による増殖はかなり難しいという。
南砺福野高は先月、大杉に感謝をささげる法要が行われた際、再び枝500本を採取して挿し木による苗木の育成に着手。最終的に計20本ほどの苗木を城端別院に届ける予定だ。
「大杉2世」の苗木育成に携わる3年の中村拓磨(たくと)さん(17)は「苦労が実った。さらに苗木を成長させたい」と話し、3年の山下太嘉(たいが)さん(18)は「今後も気を抜かず、研究を後輩に継承したい」と力を込めた。
城端別院の亀渕卓(まさる)輪番(70)は「大杉2世は私たちの大きな関心事。植樹できる日が来ることを期待している」と語り、大杉の命を次世代につないでいく思いを改めて強調した。