教員しながら映画撮影…東京国際映画祭に福井県出身の監督作品「曖昧な楽園」 5年がかりで完成

東京国際映画祭のレッドカーペットで記念撮影に臨む小辻陽平さん(左端)と出演俳優ら=10月23日、東京・日比谷ⓒJAPAN Forward by Shaun Fernando

 アジア最大級の映画祭「第36回東京国際映画祭」が10月23日、東京・日比谷地区などを会場に開幕し、最高賞を競うコンペティション部門に、教員の傍ら自主映画製作を続ける小辻陽平さん(37)=福井県越前町出身、東京都在住=が監督した初の長編作品「曖昧な楽園」が正式出品された。小辻さんは評価されたことを大きな驚きだとした上で「映画祭に集まる世界中の映画関係者と話をし、映画についての考え方、姿勢に触れて、インスピレーションを受けたい」と話している。

 「曖昧な楽園」は、交通量調査員をしながら同居する体の不自由な母を介助する達也と、寝たきりになった老人の世話をする青年「クラゲ」の物語。孤独を抱えて生きる人々の姿を通して生と死を描いた。祖父の死から着想を得て、脚本作りから演出まで役者の即興を重視し、役者との対話を重ねながら5年をかけて完成させた。

 小辻さんは武生高校、東京学芸大学を経て教員になった。学生時代にアジア映画を中心に映画を見るようになり、教員をしながら監督・俳優養成スクール「ENBUゼミナール」(東京)に通った。これまでに短編映画「岸辺の部屋」を製作し、仙台短編映画祭2017の「新しい才能に出会う」部門で入選している。

 ENBUゼミナールの市橋浩治代表(福井県越前市出身)は「規模の大きな商業映画がノミネート(正式出品)されている中、自主映画の『曖昧な楽園』がノミネートされたことは快挙だ」と話している。

 コンペ部門には、114の国と地域から1942作品の応募があり15本が選ばれた。このうち日本作品は3作品で、「曖昧な楽園」以外は岸善幸監督の「正欲」(稲垣吾郎さん、新垣結衣さん出演)と、富名哲也監督の「わたくしどもは。」(小松菜奈さん、松田龍平さん出演)。

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 23日はオープニングイベントが行われ、小辻さんは出演俳優らとともにレッドカーペットを歩いた。受賞作は最終日の11月1日に発表される。

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