冬眠前のクマに要警戒 入山時は「“鳴り物”必須」と専門家

クマによって折られたとみられるリンゴの枝。県内で食害の件数が昨年同時期を大きく上回っており、県や県警などは注意を呼びかけている=9日、河北町谷地

 大石田町でキノコ採りをしていた町内の男性がクマに襲われた事故を受け、同町は23日、町内を巡回したほか、チラシを配り警戒を呼びかけた。全国的にクマの目撃件数は異常なペースで増えており、特に県内では農作物の食害が昨年同時期を大きく上回っている。クマの生態に詳しい専門家は冬眠に向けて活動がさらに活発になるとし、入山する際、クマに存在を知らせる「鈴やラジオなど“鳴り物”の携行は必須」とアドバイスしている。

県内、餌求める時期にブナの実は「大凶作」

 今年の県内は餌となるブナの結実が大凶作の予想となっている。野生動物の生態に詳しい岩手大学農学部の山内貴義准教授によると、この時期のクマは冬眠に備え、大量の餌を求めて活動が活発化し、例年の餌場が不作だと、人里に下る可能性も高くなるという。こうした状況が農作物の食害増を引き起こす一因になっているとみられる。

 県警地域課によると、クマによる食害は今月15日現在51件で、前年同期比で26件上回る。収穫前の果実などが食べられているケースが多いという。過去5年と比較しても、2022年と21年の25件、20年48件、19年46件、18年24件で、今年の多さが際立っている。

 一方、県内での人身被害も今月22日現在5件で、記録が残る1977(昭和52)年以降の同期比で過去最多。特に10月は襲われる被害が集中して発生している。岩手、秋田両県では本県以上に、人的被害が相次いでいるが、山内准教授は「両県のクマ生息数が本県より多いことが考えられるが」と分析しながらも「ブナの実が凶作である以上、本県でも起こり得る。油断はできない状況」と警鐘を鳴らす。

 山内准教授は、人と急に出合ったクマが身を守ろうとして襲うことが多いとする。鈴やラジオを携帯し、絶えず音を出して、クマが近づかない状況を作り出すことが有効だとし「慣れた山でも、遭遇する危険性があることを忘れないでほしい」と語った。

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