那須雪崩事故公判、教諭の被告人質問始まる 別班の引率者、被害班が訓練範囲逸脱の認識 宇都宮地裁

那須雪崩事故の公判で、被告人質問が行われた宇都宮地裁の206号法廷=25日午後1時5分、宇都宮市小幡1丁目

 那須町で2017年3月、登山講習会中だった大田原高山岳部の生徒7人と教諭1人が死亡した雪崩事故で、業務上過失致死傷罪に問われた男性教諭ら3人の第13回公判が宇都宮地裁(瀧岡俊文(たきおかとしふみ)裁判長)で開かれ、被告人質問が始まった。死亡した8人がいた1班とは別の2班を引率した教諭(60)が弁護側の質問に対し、他の被告と「安全な訓練範囲を明確に定めた」と説明。1班が訓練範囲を逸脱して雪崩が起きた斜面を登っていたとの認識を示した。

 在宅起訴されたのはこの教諭の他、講習会の責任者(57)、1班の引率者(54)の2教諭。3被告は雪崩事故が発生した17年3月27日朝、前夜からの積雪により予定していた那須岳登山を中止し、雪上歩行訓練への変更を決めた。

 変更の経緯について、この日出廷した教諭は責任者と相談し「自分から(雪上歩行訓練を)提案した」と話した。訓練場所は「(スキー場の)安全なゲレンデと樹林帯に設定した」とし、範囲を明確にしたと説明。「(雪崩の)危険性は考えなかった」と述べた。

 責任者が各班の主講師らに計画変更を伝えた際には、自身がゲレンデ上部の傾斜が急な場所について「雪崩の危険があると指摘した」とも答えた。

 訓練中の1班の状況については「自分たちよりも上の方に見えた」とし、訓練場所の範囲を逸脱していると思ったという。無線連絡などをしなかった理由を問われると、「私よりも技術、経験がある先生が判断しているので大丈夫だろうと思った」と話した。

 スキー場周辺で前夜から約30センチの降雪があったとする検察側の主張について、「積雪はそんなに多くない」と反論し、15センチ程度の場所もあったなどと説明した。一方、警察の供述調書について「真意でないことを多く書かれた。自分の言葉をネガティブな表現に書き換えられた」などと訴えた。

 この日は証人尋問も行われ、県教委の第三者検証委員会委員を務めた雪氷学の専門家が出廷し、「現場での雪崩の予見は難しかった」との見解を述べた。

 次回公判は11月14日で、今回出廷した教諭の他、責任者だった教諭の被告人質問を行う。

宇都宮地裁

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