【台湾】台湾ケミコン、EV向け生産[電機] 需要拡大見込む、倉庫も新設へ

台湾ケミコンの製品倉庫の完成イメージ(同社提供)

アルミ電解コンデンサーなどの製造、販売を手がける日本ケミコン(東京都品川区)の100%子会社、台湾佳美工(台湾ケミコン)は主に電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)を含む自動車などに使用される電子部品、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー(ハイブリッドコンデンサー)の生産を始めた。EVの普及に伴って世界でハイブリッドコンデンサーの需要は拡大するとみており、段階的に生産量を増やす方針だ。新たに製品倉庫も建設する。【彦田恵里】

コンデンサーは電気をためたり、放出したりして電子回路を安定させる働きを持つ電子部品。日本ケミコンは、特に通信機器などに使われるアルミ電解コンデンサーの分野で、世界シェアトップを誇るという。

日本ケミコンは1982年に台湾ケミコンを設立。南投県埔里鎮に本社と工場、台北市中正区に製品の販売を担う拠点をそれぞれ開設した。

台湾ケミコンは設立当初、アルミ電解コンデンサーを製造していたが、2007年からはノートパソコンやマザーボードなどに使われる導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーの製造も開始。19年からは同製品の製造に一本化し、台湾内外の相手先ブランドによる生産(OEM)企業などに販売している。

ハイブリッドコンデンサーの生産は今年4月から始めた。台湾ケミコンによると、アルミ電解コンデンサーの「高い電圧でも使用できる」という点や、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーの「耐熱性に優れている」という点、「低抵抗」といった特長を併せ持った製品で、従来のアルミ電解コンデンサーに比べ少ない数で電子製品を稼働することができるという。

ハイブリッドコンデンサーはEVやHVなどに使用されており、近年世界で需要が増加。今後も成長すると見込み、段階的に増産する計画だ。それに伴い製品倉庫を設置する。

倉庫は、南投工場の隣の自社敷地内に建設する。地上1階建てで、面積は1,148平方メートル。これまで工場内に設けていた製品保管スペースよりやや広い。今後、同スペースをハイブリッドコンデンサーの製造に転用することで、増産を図る。倉庫の設置で出荷に対する利便性が向上する見通しという。投資額は非公表。

台湾ケミコンによると、22年2月ごろから倉庫の建設計画を進めてきた。今年12月に着工する予定で、24年10月ごろの稼働を目指す。大和ハウス工業が施工する。

19日には現地で倉庫建設の地鎮祭が行われ、台湾ケミコンの石野徹董事長兼総経理や日本ケミコンの今野健一取締役のほか、大和ハウス工業や南投県政府の関係者ら約40人が出席。今野氏はあいさつで、「台湾ケミコンは、日本ケミコングループにおける世界全拠点の中で中核的な生産・販売拠点だ」とした上で、「今後ますますの伸長が予想される」と期待を示した。

■自動車関連の顧客増加へ

石野氏と台湾ケミコンの生産技術部経理の久保田健氏はこのほど、NNAのインタビューに応じ、台湾を含めた世界での競争に打ち勝つには、「高付加価値製品を作ることが必要だ」と強調した。

石野氏は、台湾内外に競合が存在し、競争は決して易しいものではないと説明した。ただ、台湾ケミコンが現在製造している導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーとハイブリッドコンデンサーには、パソコンやゲーム機などの電子製品の機能を向上させるという優位性があると指摘。さらに今後増産を進める予定のハイブリッドコンデンサーは、EVやHVに利用されていることから、近年の市場ニーズであるカーボンニュートラルに間接的に貢献できると説明した。

石野氏は、今後もさらにハイブリッドコンデンサーの需要は伸びると見込んでおり、自動車関連メーカーの顧客増加を目指すとした。

倉庫建設の地鎮祭には、台湾ケミコンの石野徹董事長兼総経理(右から5人目)や日本ケミコンの今野健一取締役(同4人目)らが参加した=19日、南投(NNA撮影)

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