七尾の沢野ごぼう継承危うし 販売農家3軒、生産組合は休止

沢野ゴボウの収穫を進める前田さん夫婦=七尾市沢野町

  ●徳川将軍家献上の特産野菜 

 七尾市沢野地区で栽培され、藩政期に徳川将軍家へ献上されたと伝わる伝統野菜「沢野ごぼう」の継承が危ぶまれている。生産販売する市内の農家は3軒のみとなり、ブランド化を進めてきた生産組合の活動も休止状態。今季の出荷がピークを迎える中、生産者は「伝統を絶やすわけにはいかない」と担い手を探しながら、収穫作業を進めている。

  ●今季の出荷ピーク「伝統守る」

 沢野ごぼうは中山間地に位置する沢野地区の特産品で豊かな香りと白く柔らかな肉質が特徴。平均で直径2~3センチ、長さ70~80センチと通常のゴボウよりも大きい。食物繊維が豊富で加賀藩の献上品として将軍家が食べていたと伝わる。

 長く自家消費用として栽培されていたが、2003年に特産化を進めようと、地元住民が「沢野ごぼう生産組合」を設立、出荷規格の統一などに取り組んだ。10年ほど前には十数軒の農家が商標登録や加工品開発に取り組み、七尾の特産品として定着した。

 ゴボウは粘土質の土に突き刺さるように埋まっており、傷付けずに手作業で掘り出すには労力と時間がかかる。11年には地域団体商標(地域ブランド)を取得して消費拡大を目指したものの、生産者の高齢化が進み、JA能登わかばや道の駅「能登食祭市場」、スーパーなどに出荷する農家が年々減少した。

 JA能登わかばなどによると、生産販売を続けているのは沢野町と殿町の計3軒。生産組合はほぼ活動がなく、収穫祭の開催や小学生向けの収穫体験は近年は行われなくなったという。

 沢野町では、生産歴56年の前田義一さん(82)と妻れい子さん(74)が収穫を進めている。400平方メートルの畑で約300キロを栽培しており、今年は猛暑で水の管理が難しかったが、生育状況は上々という。収穫は11月末まで続く。

 れい子さんは「伝統の味を何とか守っていきたい。新しい生産者が出てきてほしい」と話している。

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