シネコンでおおいた自主映画祭 大スクリーンに監督ら「めちゃめちゃうれしい」【大分県】

おおいた自主映画祭に出品した監督ら
最優秀作品賞を受賞した「あいつのブラジャーとぼくのパンツ」の一場面
おおいた自主映画祭賞「駆け抜けたら、海。」のシーン
最優秀作品賞と、おおいた自主映画祭賞に贈られたトロフィー「オフロー像」

 映画が好きでたまらず自主製作をしている人たちにとって、シネマコンプレックス(複合型映画館)で作品が上映されることはある種「夢」でもある。10月29日、大分市要町のTOHOシネマズアミュプラザおおいたがその会場となり、全国から選ばれた短編8本が上映された。出品した監督らからは「大スクリーンで皆さんに見てもらうことができ、めちゃめちゃうれしい」との声が上がり、観客はクオリティーの高い作品の数々を楽しんだ。

 このイベントは「第6回おおいた自主映画祭」。2017年に小さな映像ホールで産声を上げ、スタッフが手作りで育ててきた。毎回会場をアップグレードしながら、ついにシネマコンプレックスでの開催となった。

 全国から自主製作の映画53作品の応募があり、実行委員会=宮崎亮一委員長(50)、大分市=で選考した8作品がこの日のラインアップ。当日キャンセルはあったが、用意した113席はほぼ満席に。商業目的ではないため無料で鑑賞した。投票によって各賞を決めるというルールのため、観客は心に残った作品や俳優、感想を投票用紙に書き込んだ。

 それぞれの作品は上映時間30分以内の短編。ジーンとくる親子の物語や恋人同士のストーリー、過去の因縁から異世界に入り込むホラー、複雑な恋愛感情を描いた青春ドラマ、奇想天外なコメディーなど、バラエティーに富んだ作品が次々と上映された。大スクリーンと本格的な音響を備えた“ホンモノ”の映画館であることで、自主映画祭とは思えない空間が創出された。

 審査の結果、最優秀作品賞は「あいつのブラジャーとぼくのパンツ」(松村慎也監督・脚本、23分、東京)に決まった。おおいた自主映画祭賞には「駆け抜けたら、海。」(十川雅司監督・脚本、17分、東京)。最優秀男優賞は「待ち人来たらず」(鹿野純一監督・脚本、15分、東京)の大川裕明さん、最優秀女優賞は「駆け抜けたら、海。」の松原怜香さんが受賞した。表彰式で宮崎実行委員長が、おんせん県にちなんだトロフィー「オフロー像」や賞状を贈った。

 客席へのインタビューもあり、作品の一つに号泣したという女性は「レベルが高く、これが自主映画なのかと驚いた。もっと見たい」と感想。おおいた自主映画祭に初めて来たという男性は「昔のことを思い出した。父親の気持ちが分かるなぁと思った作品があった」と話した。

 そのほかの作品は次の通り。▽「つくもさん」(鹿野洋平監督・脚本、14分、神奈川)▽「ブクブクあわのゴシゴシけん」(田野聖子監督、田野聖子&秋之桜子脚本、25分、東京)▽「シカト」(三浦賢太郎監督・脚本、14分、東京)▽「ただいまを告げた日」(ごとうしょうし監督・脚本、25分、大分)▽「ちょっとインタビューいいですか?」(和田直樹監督、大津啓資脚本、16分、大分)。

 この日、会場にやってきた各作品の監督やスタッフ、実行委員会の面々は映画祭終了後、大分市内の居酒屋へ。宮崎実行委員長らは「映画上映もさることながら、打ち上げで一杯やるのが格別なんです」。その気持ち、よく分かる。

 (下川宏樹)

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