子どもの性被害 長崎県内でも発生 立場を悪用、関係者は「氷山の一角」 早期の対策強化訴える

各地で相次ぐ子どもへの性犯罪。身近な場所でも起こる可能性はある(写真はイメージ)

 中学校長による生徒への性的暴行や学習塾での盗撮、ジャニーズ事務所の性加害問題など、次々と明るみに出ている子どもへの性犯罪。立場を悪用した事件は長崎県でも少なからず起きている。子育て支援の関係者は「小児性犯罪は表に出にくく(明るみに出た被害は)氷山の一角」と指摘し、早期の対策強化を訴える。

 10月下旬、長崎地裁。県内の公民館のトイレで小学生の女児にわいせつな行為をしたとして、強制わいせつなどの罪に問われた長崎市の自営業の男(47)に対し、太田寅彦裁判官は、懲役3年(求刑懲役4年)の判決を言い渡した。
 被告の男は書道教室の講師で女児は教え子。信頼していた大人による性加害だった。判決によると、被告は別の教え子男女9人が被告宅の風呂に入浴している様子を盗撮し、児童ポルノの製造もしていた。
 「小児性愛というか…、自身の性癖が原因です」。公判中、犯行の原因を問われ、被告はそう言った。女児の現状を想像できるかという問いには、「どうしているか気にはなっている」「身勝手ではあるんですが…。なるべく幸せに過ごしてもらいたいと思っている」と淡々と述べた。
 その後、意見陳述に立った女児の父親は、被告への怒りをにじませながら「(娘に)一生消えない傷を負わせてしまった」と後悔と自責の念を繰り返した。
 判決言い渡しの時、上下黒色の服に身を包んだ被告は下を向いたまま、微動だにしなかった。弁護人によると、今はまだ、控訴するかどうか決まっていない。再犯防止に向けた専門的な治療を受ける意向は示している。
     ◇ 
 子どもへの性犯罪が相次ぐ中、関心を集めているのが、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴の有無を確認する「日本版DBS」制度。英国の制度を参考に政府が導入を目指している。当初、開会中の臨時国会に関連法案の提出を予定していたが、対象職業や憲法が保障する「職業選択の自由」との関係など検討課題が残り、年明けの通常国会以降に先送りされた。
 対象職業の議論では学童保育や学習塾など習い事の扱いが焦点に。県学童保育連絡協議会の小山浩会長は「一緒に遊ぶことも多く、スキンシップは一定ある。でも何か被害が起きてからでは遅い」と導入の動きに理解を示す。ただ、学童は「学校でも家庭でもない第3の居場所」だとし、「リラックスできる空間が監視的になりすぎないだろうか」と懸念も口にした。
     ◇ 
 子育て支援事業を展開する認定NPO法人フローレンス(東京)は、2017年からDBS導入を提言してきた。「最初から完璧な制度はない。(導入後)少しずつ対象の範囲を広げていくことが子どもを守る近道」だとし、早期の制度開始を期待する。
 DBSを巡り、加害者の更生とのバランスも議論の俎上(そじょう)に上がるが、同法人は「性犯罪は再犯率が高い。職業選択の自由や加害者更生も大事だが、子どもを守ることに重きを置いて制度設計すべき」と主張する。
 一方、DBS導入だけでは、再犯を抑えることができても、全ての性犯罪を防ぐことは難しい。同法人で政策提言を担当する米田有希・代表室長は「『プライベートゾーン(水着で隠れる部分)は人に見せてはいけない』など幼少期からの性教育も重要」と強調。子どもの人権を守り、いかなる危害も及ぼさないよう組織的に取り組む「子どものセーフガーディング」の浸透を急ぐ必要性も訴える。

© 株式会社長崎新聞社