ポメラニアン犬のフラン 「へき地医療」に従事する飼い主と高島に“着任” 島の暮らし満喫中

診療所の前に広がる海を眺めるフランと西倉さん=長崎市高島町

 ことし7月、長崎市の高島に1匹のポメラニアン犬が降り立った。へき地医療に従事する飼い主の赴任に同伴し、島唯一の診療所にやって来たフラン(雌15歳)。高島国民健康保険診療所所長で飼い主の西倉哲司さん(65)と初の島暮らしを満喫している。11月1日は犬の日-。

ポメラニアン犬のフラン

 診療所のドアを開けると、フランは小走りで出迎えてくれる。「うちの受付嬢です」とジョークを飛ばす西倉さん。白衣の下は黄色と黒のジャージー姿で、阪神愛あふれる関西人である。もともとは救急医。2010年から兵庫県の本宅を離れ、フランと共に名古屋、北海道、広島へ。老人施設の訪問医やへき地の医師として経験を積み「医師人生の締めくくりは離島で」と高島に来た。
 人口は300人足らず。1日の患者数が多くないからこそ、患者とじっくり向き合うことができる。待合室や事務室を動き回り、患者にもすっかり知られた存在のフラン。2階で寝ていても、患者の気配がすると「下に行きたい」とほえてアピールしてくるほど人が大好きなのだという。なでてくれる人にはぴったりと体を寄せ、真ん丸な瞳で見つめ返す。「患者さんのほほ笑みを引き出す力は“4人目の看護師”とも言えるんかなぁ」。絶大な信頼を寄せる西倉さんもまた、精神的に助けられている。年を取り、寝ている時間が増えてきた愛犬に望むことは「元気で長生き」だ。
 お裾分けの魚は西倉さんよりもたくさん食べ、海辺の散歩も大きな楽しみ。フランにとっても島の暮らしは、当分飽きそうにない。

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