海王丸の絶景に感激 総帆展帆ボランティア養成訓練 本社記者が参加

高さ約20メートルのヤードに上り、帆を広げる練習をする長尾記者(左)=射水市の帆船海王丸

 射水市の観光名所「帆船海王丸」。一番の目玉が全29枚の帆を広げる「総帆展帆(そうはんてんぱん)」だ。展帆作業に参加したボランティアに話を聞くと「最高に気持ち良く、達成感がある」と口にする人が多い。海王丸を見ながら達成感を得たいと思っていると、ボランティア養成訓練に誘われた。高い所が苦手で不安もあったが、貴重な機会と捉え、挑戦してみた。(射水支局・長尾皓平)

 「展帆作業」は年10回実施され、ボランティアが作業に当たる。帆を広げるために甲板上に立つ柱(マスト)に上り、マストに付いている横向きの柱(ヤード)で帆を縛ったひもをほどく。その後、甲板上で帆に繋(つな)がったロープを引っ張ると帆が開く。かなりの重労働で、総帆展帆には総勢90人が参加する。ボランティアとなるには2日間の養成訓練が必要だ。

 今回の訓練は28、29日に実施され、県内外から7人が参加。28日はあいにくの雨で、座学で帆船の構造や安全に作業するための知識を身に付けた。長時間座っていると、つい眠気に襲われる。すかさず講師の大田大二等航海士から「海王丸の高所作業は常に危険と隣り合わせ。集中して」と言われ、気が引き締まった。

 29日は甲板での作業が中心だ。座学の知識を生かし、帆を広げるため高さ約30メートルのメインマストの台まで登った。最初は余裕だと思っていたが、下を向くとあまりの高さに足が震え、汗が止まらなくなった。震える手を押さえながら30メートルを登り、周りを見渡すと日本海と射水の市街地、新湊大橋が一面に広がる絶景に感動した。

 甲板に降り、ひと息つくと「次は帆を張るためにヤードを渡る」と言われた。あまりの恐怖心でリタイアしようと思ったが、富山高専3年の佐藤純之介さん(17)が「仲間として、一緒に頑張ろう」と声を掛けてくれ、27歳の記者も年下の激励に腹をくくった。「負けていられない」

 結果はヤードに渡ってすぐ足がすくみ、先に降りることになった。

 甲板上では参加者全員で帆に繋がったロープを引っ張った。「わっしょい」のかけ声でタイミングを合わせたが、想像以上の重みで汗だくに。大学時代はラガーマンとして鍛えた腕も悲鳴を上げた。

 体験を通し、船上作業の難しさと海の男のロマンを感じた。今年度は天候の影響やボランティア人員の不足で、まだ「総帆展帆」ができていない。11月3日には今年度、最後の展帆作業が行われる。自分も一員として参加し、役に立ちたい。

高さ11メートルのトップ台からの眺め

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