社説:金融緩和の修正 限界を見据え出口探れ

 日銀が大規模な金融緩和策の再修正に動いた。

 7月に長期金利の上限を引き上げたが、金利上昇の圧力に3カ月で見直しに追い込まれた。

 国内外の経済や金融市場が大きく変動する中、日銀が国債の大量購入で金利を抑え込む手法の限界を示しているのではないか。

 状況に応じて機動的な政策運営を図りつつ、類例のない非常時の手法から脱する「出口」戦略の議論を進めるべきだろう。

 再修正は、長期金利が上限としていた1%を一定程度超えることを認めるとした。7月に0.5%程度から1%までに引き上げ、今回さらに運用を柔軟化した。

 植田和男総裁が「予想以上だった」と誤算を認めたのが、米国発の金利上昇だ。米国の利上げが続くとの見通しにつられる形で、日本の長期金利も先週に一時0.885%と約10年3カ月ぶりの高水準を付け、1%に迫っていた。

 無理に1%以下に抑え込もうとすると、本来あるべき金利水準とかけ離れる副作用が広がり、国債購入額も巨額になるのを避ける判断といえよう。

 一方、短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度に誘導する緩和策の大枠は据え置き、分かりにくさは増した。

 消費者物価の上昇率見通しは、2023、24年度とも7月予想から引き上げて2.8%とした。日銀の10年来の2%目標を昨年度に続いて上回るが、原油高などが理由で、「安定的、持続的な上昇」ではないと慎重姿勢のままだ。

 焦点とみているのが、来春闘を含め賃上げの継続が物価に反映される経済の好循環である。

 ただ、米欧と逆向きの大規模緩和策は今回も微修正にとどまったと市場は受け止め、金利差から為替相場は円安傾向を強めた。

 輸入物価の上昇を通じ、国民生活や企業経営の圧迫要因となる。長期金利の上昇は固定型住宅ローンや企業向け融資の金利上昇にも影響する。金融市場と景気の両方に目配りする難しいかじ取りは続くだろう。

 今回の再修正は、金融政策の正常化に向けた地ならしではないかと市場の注目を集めている。日銀の裁量は広がるため、どう判断して動くのか丁寧に説明して市場と対話し、出口へ向かう手だてや備えも検討すべきである。

 政府も、金利上昇に伴う国債利払い増大のリスクを直視し、日銀の買い支えで緩んだ財政規律の立て直しが急務だ。

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