夢のレトロ看板展を同級生が実現 4年前、47歳で他界、穴水出身の伊藤さん収集「コレクターの情熱感じて」

伊藤さんの念願だった個展の開催に向け、ホーロー看板の展示準備を進める関係者=金沢市小立野5丁目の金沢美大旧校舎

  ●3日から金沢美大旧校舎で300点展示 

 昭和のまちを彩ったレトロなホーロー看板を展示するコレクション展(北國新聞社後援)が3日、金沢市の金沢美大旧校舎で開幕する。穴水町出身の広告ディレクターで4年前に47歳で他界した伊藤雅克さんが夢見た個展開催の遺志を同級生らが継ぎ、母校での実現へ奔走。2日は伊藤さんが約30年かけて集めた約300点が搬入され、同級生は「日本屈指のコレクターの情熱と看板の魅力を感じてほしい」と願っている。

 収集品はおなじみの栄養ドリンク、ビールなどの看板や世界に3枚しかないとされるマニアックなものを含む約300点となる。

 展覧会は、伊藤さんの看板に関する本紙記事を金沢美大の同級生が知ったことがきっかけで、代表発起人のCMディレクター・監督の高橋英之さん(51)=東京=が中心となって準備を進めてきた。

 高橋さんは学生時代、伊藤さんと県内外へホーロー看板集めに出掛けた。卒業後、共に東京で働くようになり、伊藤さんの家を度々訪ねた。食事の時間も惜しみ深夜まで看板の話を熱心に語った伊藤さんの姿が思い出に残っている。

 大量の看板はどれも大事に梱包(こんぽう)されていた。高橋さんは「伊藤は全て広げて見たことはなく、本来なら誰よりも彼に見てほしい。でも今、『みんな、見てくれ』と彼から言われている気がする」と語る。

 コレクション展は、金沢美大の新校舎移転に伴う企画「金沢美大引っ越しだよ!全員集合」の一環で、金沢市小立野5丁目の旧校舎で5日まで開かれる。入場は無料。伊藤さんと金沢美大で同級生だったアニメ映画監督米林宏昌さん(野々市市出身)が、自転車に乗って看板を集める伊藤さんの姿を描いたポストカードが来場者に配られる。

 伊藤さんの姉の小泉慶子さん(54)=野々市市=は「弟の夢を実現させたかったが、どうしていいか分からなかった。皆さんの協力があり、本当にありがたい」と感謝を口にした。

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