山形五堰(山形)、世界かんがい施設遺産に登録 県内2例目

世界かんがい施設遺産に登録され、県庁前の県民緑地を流れる山形五堰の一つ「笹堰」=山形市

 山形市内を流れる「山形五堰(せき)」が4日、歴史的な価値のある農業用水利施設を登録する「世界かんがい施設遺産」に選ばれた。県内では庄内町の北楯大堰(きただておおぜき)(2018年登録)に次いで2例目。市街地を網の目のように流れる堰は全国でも珍しく、現在まで400年近く利用されている点が評価された。地元関係者は「これを機に関心が高まり、地域活性化につながれば」と期待している。

 世界かんがい施設遺産は、国際かんがい排水委員会(ICID、本部=インド・ニューデリー)がかんがい農業の発展に貢献した水路や堰、ため池などを保存する目的で14年に創設。建設から100年以上が経過した施設が対象で、昨年時点で世界17カ国の142施設が登録され、日本は最多の47施設に上る。この日、同国のヴィシャーカパトナムで開かれた国際執行理事会で登録が決まった。

 山形五堰は馬見ケ崎川から取水している笹堰、御殿堰、八ケ郷(はっかごう)堰、宮町堰、双月堰の総称で、総延長は約115キロ。400年前の1623(元和9)年に馬見ケ崎川で大雨による洪水が発生し、翌24(寛永元)年に当時の山形城主鳥居忠政が川の流路を変える工事を行った際、城の堀への導水と生活・農業用水の確保を目的に造ったとされる。市は歴史資産として中心市街地活性化などへの活用も進めている。

 各堰の水利組合や市でつくる馬見ケ崎川・五堰水利調整協議会(名佐原市則会長)が今年2月に申請し、ICID日本国内委員会の審査で同6月、本部審査に進む4候補の一つに選ばれていた。

 現地で登録証を受け取った名佐原会長は「非常にうれしい。市民の力を借りながら、後世に引き継いでいきたい」と感慨深げに話した。

 「水の町屋 七日町御殿堰」を運営している七日町御殿堰開発の結城康三社長は「世界の人に知ってもらえるのは良いこと」と歓迎した。山形大小白川キャンパス脇を流れる笹堰の清掃ボランティアに取り組む学生サークル「まちの記憶を残し隊」の代表を務める同大人文社会科学部3年高橋怜華さん(20)は「身近にある五堰に目を向けるきっかけにしてほしい」と願いを込めた。

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