今週はヨーロッパ組が忙しい…/原ゆみこのマドリッド

[写真:©Atlético de Madrid]

「そうよね、今は目の前の試合よね」そんな風に私が頷いていたのは月曜日、CL4節を控え、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場で開かれた記者会見でシメオネ監督が、ええ、実際、ヒル・マリン筆頭株主もTVE(スペイン国営放送)のインタビューで、2027年までの契約延長が決まりかけているのを認めていたんですけどね。その件に関する質問には一言、「セルティック」としか答えなかったのをライブ配信で見た時のことでした。いやあ、今季のアトレティコは昨季よりマシで、ここまで1勝2分けながら、CLグループEでフェイノールトに次ぐ2位。しかも3位のラツィオまで、勝ち点が6、5、4と団子状態のため、決勝トーナメントに行ける可能性は十分あるんですけどね。

といっても5節のフェイノールト戦はここ6試合白星のないCLアウェイゲームのため、あまり勘定には入れられず。最終節には現在、セリエA10位とはいえ、イタリア勢であるだけで侮れないラツィオをメトロポリターノに迎えるため、とにかくこの火曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのセルティック戦には必勝が求められるんですが、ちょっと心配になったのはシメオネ監督の前に喋ったエルモーソのせい。というのも前節で2-2と引分け、しかも開始4分という早い時間に古橋亨梧選手に先制点を奪われて、ようやくわかったんでしょうか。

「Tiene jugadores con mucha intensidad y verticales/ティエネ・フガドーレス・コン・ムーチャ・インテンシダッド・イ・ベルティカレス(強度のあるプレーで、縦に動ける選手たちがいる)。それには気をつけないといけないし、試合への入り方が勝負を決する時もある」なんて、そんなこと、グラスゴーに行く前から肝に銘じておくべきではなかった?一応、シメオネ監督は「Esperemos estar a la altura de lo que pide el partido/エスペレモス・エスタル・ア・ラ・アルトゥーラ・デ・ロ・ケ・ピデ・エル・パルティードー(ウチが試合が要求する高みにいられることを期待している)」と言っていましたが、サムエル・リノは回復したものの、セルティック・パークでレッドカードをもらって退場となったデ・パウルは出場停止。相手もグループ敗退や3位でのEL転戦が懸かっていますし、果たしてアトレティコはクラブ最多記録のホーム15連勝を16に伸ばすことができるんでしょうか。

え、でも彼らは週末のリーガで勢いをつけることができなかったんじゃないのかって?その通りで、コパ・デル・レイ1回戦がなく、中4日と間が空いてしまったのが却って、良くなかったんですかね。金曜午後9時のキックオフというのにわざわざ前日移動して、昼間、ずっとホテルで待機していたのも体をなまらせたか、ラス・パルマス戦の前半はほとんど何もせず。もしかしたら、このところ、6連勝しているのに胡坐をかいて、そのうちゴールは入るだろうと私と同じに選手たちも考えていたのかもしれませんが、その間、虎視眈々とチャンスを狙っていた相手が後半に入ってすぐ、6分にはキリアンのゴールで先手を取ったから、意表を突かれたの何のって。

それはグリーズマンが左サイドでマルモルにボールを奪われたのがキッカケで、アトレティコの選手たちが悠長に抗議している間にカルドナがドリブルで敵陣エリアに接近。ええ、リケルメなども「Creo que ha habido una duda en el primer gol porque creíamos que había salido el balón/クレオ・ケ・ア・アビードー・ウナ・ドゥーダ・エン・エル・プリメール・ゴル・ポルケ・クレイアモス・ケ・アビア・サリードー・エル・バロン(ボクらはボールがラインを越えたと思っていたから、最初のゴールには疑問があった)」と言っていたんですけどね。我が道を貫いたラス・パルマスはモレイロに繋ぎ、ハビ・ムニョスはパスをスルーしたものの、最後はキリアンがエリア前から撃ち込んで、GKオブラクが破られてしまうとはこれ如何に。

1点リードされたアトレティコは3分後、リケルメが前節アラベス戦の2匹目のドジョウを狙ってやろうと、ゴール前左からシュートを撃ったんですが、GKベジェスにはシベラと違い、ツキがありました。ボールに触った後にゴールポストに助けられ、即座に同点とはならなかったんですが、理解不能だったのはその後のシメオネ監督の人事起用策。早くも15分、チームの大黒柱であるグリーズマンとコケをコレアとマルコス・ジョレンテに代えてしまうって、一説によると、これはCLセルティックに備えての温存策だったそうですが、でもお、チームは負けてて、ゴールを必要としているんですよ!

20分にもビッツェルとデ・パウルをヒメネスとサウールに交代し、一応、選手をリフレッシュした形になったものの、30分、再びミスから敵に塩を送ってしまったのは、ピッチに残っていたバリオスでした。そう、エルモーソのパスを受けるはずだったのが、後ろから来たハビ・ムニョスにボールを取られてしまい、ムニルがエリア前からベニトにラストパス。そのシュートも見事に決まって、2点ビハインドになったとなれば、もう試合も終盤でしたしね。ほぼ私も諦めかけていたんですが、いたんですよ。アトレティコにはまだ、ゴール運に見放されていなかったFWが。

それはモラタでガランがモリーナと代わり、リケルメが右サイドに移っていた38分、そのクロスをワンタッチでゴールに蹴り込み、1点差にしてくれたんですが、うーん、実は同点にできるチャンスも45分にあったんですけどね。せめてもの罪滅ぼしをしようと、バリオスがエリア外から放った弾丸シュートはバジェスに弾かれてしまったものの、そのボールを拾ったモラタが体を反転。角度のない位置から撃ったところ、惜しくも枠に弾かれてしまうとは!

いえ、どちらにしろ、引分けではお隣さんとジローナを越えて、1日天下の首位の座を楽しむことはできなかったんですけどね(最終結果2-1)。いやあ、このアトレティコ、シーズン後半盛り返してCL出場圏に入った昨季も何度か、レアル・マドリーから2位の座を奪うチャンスがありながら、自らが躓いて実現せず。その残念な傾向がもしや、今季も続いている?オブラクなど、「試合はまだ沢山あるから、心を強く持って、立ち上がって、改善していくだけだ。Estoy seguro que al final de la Liga vamos a estar contentos/エストイ・セグロ・ケ・アル・フィナル・デ・ラ・リーガ・バモス・ア・エスタル・コンテントス(リーガ終了時にはボクらが満足していることを信じている)」と言っていましたが、はあ。それって、CLリピートとなる4位以上で満足ってことじゃないですよね。

そして土曜にはバルサが奇跡の終盤ロスタイムゴールでレアル・ソシエダに0-1と勝ったため、アトレティコは4位に戻り、同日昼間の試合でも予想外の快進撃を続けるジローナがオサスナに2-4と勝利。首位と勝ち点差6になったシメオネ監督のチームはともかく、3差をつけられた状態で日曜夜の兄弟分ダービーでラージョをサンティアゴ・ベルナベウに迎えたマドリーはどうだったのかというと。これがまた、いよいよ冬が始まったマドリッドの夜に今季初のヒートテック着用となった私だったんですが、試合前にはアンチェロッティ監督が「Es el momento de dar un golpe fuerte en la mesa en la Liga y en la Champions/エス・エル・モメントー・デ・ダール・ウン・ゴルペ・フエルテ・エン・ラ・メサ・エン・ラ・リーガ・イ・エン・ラ・チャンピオンズ(リーガとCLでガツンと行く時だ)」と言っていた割に内容がかなり、お寒くてねえ。

開始早々の前半5分、ウナイ・ロペスからボールを奪ったバルベルデがエリア内まで突進、1対1のシュートを撃ちながら、GKディトリエフスキに弾かれてしまったのがケチのつき始めだったんでしょうか。この日、ホームで5得点という実績を買われ、先発に抜擢されたホセルが何度もシュートを撃ったものの、全然、決まらなくてねえ。ただ、それよりチームに打撃を与えたのはむしろ、8分にイシへのボールを胸でカットしたベリンガムが転倒し、左肩を脱臼してしまったこと。当人は痛みを我慢してプレーを続行したものの、ハーフタイム近く、ウナイ・ロペスとエスピーナの隙間で体を回して撃ったボールは枠を捉えるには至りません。

前半はRdT(ラウール・デ・トマス)やアルバロ・ガルシアがエリア内からのシュートを外したぐらいで、息を潜めていたラージョも0-0のままで迎えた後半15分には、ウナイ・ロペスとパテ・シスをトレホとキケ・ペレスに交代。30分にはRdTとアルバロ・ガルシアをファルカオとベベに代えて、守っているだけでなく、どうにかして得点しようと試みたんですけどね。試合前にはついぞ、見たことのない長さの行列がビジターゲートにできるぐらい、大勢が応援に駆けつけたラージョファンには気の毒でしたが、そこは実力差と言いましょうか。広いベルナベウではエスタディオ・バジェカスに慣れた彼らにはやはり難しかったのか、枠内シュートを1本も撃てず、GKケパを脅かすことすらできなくてはねえ。

ただ、後半20分にビニシウスのゴールがオフサイドで認められなかった後、モドリッチからロドリゴに代えても、うーん、アンチェロッティ監督は「Vinicius y Rodrygo van a meter más goles que Bellingham y Joselu/ビシウス・イ・ロドリゴ・バン・ア・メテール・マス・ゴーレス・ケ・ベリンガム・イ・ホセル(ビニシウスとロドリゴはベリンガムとホセルより、ゴールを多く挙げてくれるだろう)」と持ち上げていたんですけどね。せっかくCL3節のスポルティング・ブラガ戦でリーガ開幕戦以来となる得点をして、ゴール日照りから脱却できたかと思われたロドリゴのtaconazo(タコナソ/ヒールキック)はディトリエフスキが軽くキャッチ。ビニシウスに至ってはロスタイム入り直前、CKを急ぐ余り、ラージョのGKからボールを取り返そうとした際に相手が転び、tangana(タンガナ/小競り合い)の原因になっている始末でしたからね。

結局、7分以上続いた長いロスタイムもラージョは耐えきり、試合はスコアレスドローで終了。ラージョにとっては、23年ぶりにベルナベウで勝ち点をもぎ取るという、嬉しい引分けになりましたが、今季初めての無得点試合、かつホームで初めて勝ち点を失うという経験をしたマドリーにとっては、単独首位となったジローナと勝ち点3差となった以上にショックな結果だったかも。いえ、アンチェロッティ監督は「Si teníamos que ganar un partido, mejor ganar contra el Barcelona que contra el Rayo/シー・テニアモス・ケ・ガナール・ウン・パルティードー、メホール・ガナール・コントラ・エル・バルセロナ・ケ・コントラ・エル・ラージョ(勝たないといけない試合があるとしたら、ラージョに勝つより、バルサに勝つ方がいい)」と皮肉めいたことを言っていましたけどね。問題は今の彼らはベリンガムが得点しないと勝てないということ。

実際、今季はこの日以外、メトロポリターノでの3-0完敗とサンチェス・ピスファンでの1-1引分けで、勝ち点を落としただけのマドリーですが、その3試合、MFとして入団しながら、いつの間にやら、エース扱いになっている20才のイギリス人はゴールを入れておらず。それだけに水曜午後9時にスポルティング・ブラガを迎えるCL戦までに、比較的軽傷と言われている肩の痛みが引いているかどうかが懸念されますが、え?グループリーグ3連勝のマドリーは余裕の首位なんだから、全然、ムリさせる必要はないんじゃないかって?まあ、その通りなんですが、3節では1-2の接戦で勝ったブラガは先週末、ポルティモネンスに6-1と大勝し、士気を上げていますからね。

それでもベルナベウで2、3点差をつけられれば、ラージョ戦ではフェネルバフチェからの移籍後、初めてベンチに入りながら、「porque había mucha pelea, mucho balón alto y muchos duelos/ポルケ・アビア・ムーチャ・ペレア、ムーチョ・バロン・アルト・イ・ムーチョス・ドゥエロス(激しく争っていて、空中戦やドゥエルも沢山あったから)」(アンチェロッティ監督)とデビューを見送られてしまった18才のギュレルの勇姿を見るチャンスもあるかも。終盤にルジューヌと諍いを起こして、両成敗でイエローカードをもらい、累積警告となったリュディガーが出場停止となるのは土曜のバレシア戦ですしね。フラン・ガルシアは古巣相手に合格点のプレーを見せたとはいえ、メンディも筋肉痛から回復してくるようなので、メンバー的には大丈夫そうなマドリーですが、何はともあれ、ファンがゴールを祝える試合なってくれたらと思います。

そして月曜の夜、リーガ12節のトリを飾ったのが弟分のヘタフェだったんですが、これがまた、コリセウムでは一段と寒さが増していてねえ。おまけに先週ミッドウィークのコパ・デル・レイ1回戦ではタルディエンテ(RFEF3部/実質6部)相手に大量12点を挙げ、滅多にないゴール祭りをしてきた反動が出たんでしょうか。カディス戦の前半はパスもようよう3度と続かないような有り様で、かといって、敵もパッとしなかったため、2晩続けて、スコアレスドローを見せられるのか、私もウンザリしていたんですけどね。一転、これが0-0なら、御の字になったのはハーフタイム直前、ジェネが2枚目のイエローカードをもらって退場させられてしまったから。

実際、この時はカディスがCKを蹴るのを待っている間、まだプレーが始まっていない時にジェネがハビ・エルナンデスの顔にcodazo(コダソ/肘打ちを)を見舞ったとして、ペナルティを取られなかっただけでも有難かったんですけどね。ただ、この日のヘタフェは10人になったせいで却って、気が引き締まったか、後半の方が出来が良かったんですよ。とうとう30分にはジェネの代わりにボランチに入ったルイス・ミジャが蹴ったCKをグリーウッドが頭で繋ぎ、ファーサイドでフリーだったボルハ・マジョラルがこちらもヘッドでゴールにすることに成功。数的劣勢でもあまり影響しないセットプレーを上手く利用してリードを奪うと、そのまま1-0で逃げ切ってしまったんですから、根性あるじゃないですか。

まあ、10人の方がいいプレーをするなら、最初から10人でスタートすればいいじゃないかという揶揄は置いておいて、これでヘタフェはようやく、ここ6試合白星なしの5連続引分けという悪い流れを脱出。次節は降格圏にいるグラナダが相手とあって、今季初のアウェイ勝利もゲットできたらいいんですけどね。折しもラージョは同じ土曜に現在、単独首位のジローナをホームに迎えるため、11位のヘタフェも上手くいけば、9位にいる弟分仲間と勝ち点で並べるかもしれないというのはちょっと、励みになるかもしれませんね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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