事故現場にガソリン漏れの横転車 ロック解除し男性救助、炎上恐れにエンジン止める 高3生に善行表彰「迅速かつ的確な行動」

全校生約430人の前でのじぎく賞を受けた西田悠生さん(左)と大戸英治署長=小野工業高校

 自損交通事故で車内に閉じ込められた加西市の男性(71)を救助したとして、加西署は小野工業高校機械工学科3年の西田悠生(ゆうせい)さん(18)=加西市野田町=に県の善行表彰「のじぎく賞」を贈った。冷静、的確な対応は警察も称賛するほどで、西田さんは「次も困っている人がいれば助けたい」と力強く誓った。(坂本 勝)

 10月1日午後1時15分ごろ、加西市王子町。西田さんは祖母が運転する車で帰宅中、あおむけになっている軽乗用車を見つけた。

 西田さんは車から降りて軽乗用車に近づいた。助手席の窓が開いていたので、手を入れてロックを解除。ドアを開けて中に入り、男性のシートベルトを外すと、抱えるようにして助け出した。

 同時に車の炎上を心配し、エンジンを切った。110番し、近くの電柱に記された町名や番地を伝え、パトカーが来るまで男性を見守った。

 男性はぐったりしていたが、目は開けており「やってもたわ」とつぶやいた。西田さんは「けがはありませんか」などと声をかけた。男性は腰を打撲した程度で、入院もせずに済んだという。

 西田さんが車の事故現場に遭遇したのは、これが2度目だった。高校2年の冬に通学中、加西市内で高齢男性が事故に遭った現場に通りかかり、110番した。この際、電柱で場所を確認できることを知ったという。

 今回の事故について「助けようと必死で、怖くは感じなかった」と振り返る西田さん。「以前の経験で冷静になれたが、はっきりと伝えられるように、見たことを全てメモしておく大切さを学んだ」と語った。

 サッカー部前主将の西田さんは卒業後、加古川市内の工場で働く予定だという。今月1日、同校で賞の贈呈式があり、見守った母親の美香さん(46)は「勇気ある行動ができ、成長したんだなと思う」とほほえんだ。

 加西署の大戸英治署長は「水路にはガソリンが漏れており、エンジンを止めた判断も素晴らしい。迅速かつ的確な行動で言うことなし」とたたえた。

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