ハピラインふくい最初の新駅「最短」で準備中…ただの駅じゃない、誕生を心待ちにする住民たちの思いとは

JR森田駅を中心としたにぎわいづくりを進めようと開かれた社会実験イベント。スイーツ販売やゲームコーナーなど11のブースが並び、大勢の人でにぎわった=7月2日、福井県福井市の同駅
【グラフィックレコード】地域のランドマーク

 来春開業するハピラインふくいで最初となる新駅の設置準備が、福井県越前市畷町の王子保-武生駅間で進んでいる。武生商工高校の工業キャンパスから東に徒歩約5分。同校のキャンパス統合に合わせ、2025年春の開業を目指す。

 ハピラインの運行開始から1年後の新駅設置は、「最短」(福井県地域鉄道課)のスケジュール。県などがJR西日本に協力を求め、通常なら経営移管後に行う詳細設計を本年度に繰り上げ、当初予定の1年前倒しが実現した。新駅の駅西広場には、武生商工高の生徒が参加して看板やベンチを製作することが検討されている。

 新駅誕生が地域に与えるインパクトは大きい。「駅は乗客だけでなく住民が集まる場所。まちのランドマークになる」。越前市南地区自治振興会の能勢淳一郎会長(68)は、周辺への出店や人の流れを思い描き、「地区の新しい未来が開ける」と胸を膨らませる。

 越前市の駅名案公募には予想を上回る500件超が寄せられ、市民の関心の高さをうかがわせた。11月に地元の案として駅名が決まる見通しだ。

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 沿線では福井市と鯖江市にも新駅が一つずつ設置される予定だ。福井―森田駅間の候補地、近町踏切近く(福井市高木町・高木2丁目)は、試算では1日の利用者数が約900人で越前市、鯖江市の各約200人を大きく上回る。

 しかし、人口減少に伴い利用者が減っていくのは避けられない。持続的な利用につながる周辺のまちづくりや市民の意識醸成は欠かせず、福井市の新駅設置検討会議は付帯意見で「駅周辺のまちづくりとの連携」を求めた。

 会議の委員長を務めた福井大の川本義海教授は「(西側一帯に既成市街地がない)近町踏切付近は開発ポテンシャルが高い。駅直結の公園や中心市街地の混雑解消を図るパークアンドライド拠点などさまざまな可能性がある」と強調。JRからの経営移管は駅の活用にとっても好機とし「資金面でも行政が支援しているハピラインは、ある意味県民全員が出資者ともいえる。駅や鉄道をどう活用していきたいか、住民の意見を反映し本気で取り組める環境ができた」と話す。

 既存駅でも住民を巻き込み、駅を中心とした活性化が進む。22年4月に無人駅となった森田駅(福井市)では、森田公民館が中心となって07年から「森田ゆめ駅」と銘打ったイベントを定期的に開いている。今年7月には、ハピライン開業を見据えた2度目の社会実験イベントを開いた。地区内の11団体・個人がスイーツ販売やゲームコーナーなどのブースを構え、無人駅は大勢の地元住民でにぎわった。

 森田地区がまちづくりの核に駅舎を据えたのには、顕著な人口増加を続けているという地域特性がある。酒井忠正館長は「昔からの住民も新しい住民も使い、混在する場が駅。地域のお年寄りや、お父さんの帰りを待つ母子など、乗降客にとどまらない多くの人が集える可能性がある。事業者や学生など多くの人を巻き込みながら、持続的な発展につなげたい」と展望した。

⇒「【記者のつぶやき】人と人がつながる駅」を読む

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 来年3月の北陸新幹線福井県内開業を契機とした新時代の福井のあり方を探る長期連載「シンフクイケン」。の第5章テーマは「ハピラインにバトン」。新幹線開業後、JR北陸線を引き継ぐ第三セクター「ハピラインふくい」の展望や課題を探ります。連載へのご意見やご感想を「ふくい特報班」LINEにお寄せください。

シンフクイケン・各章一覧

【第1章】福井の立ち位置…県外出身者らの目から福井の強み、弱みを考察

【第2章】変わるかも福井…新幹線開業が福井に及ぼす影響に迫る

【第3章】新幹線が来たまち…福井県外の駅周辺のまちづくりなどをリポート

【第4章】駅を降りてから…観光地へどう足を運んでもらう?

【最新・第5章】ハピラインにバトン…JR北陸線を引き継ぐ第3セクターの展望、課題は?

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