「現代の名工」に電気めっき工・三沢さん(山形) 「鉛フリー」技術開発、医療用製品の開発も

「現代の名工」に選ばれた三沢孝夫さん=山形市・スズキハイテック

 厚生労働省は10日、工業や建築、食品関係などの各分野で卓越した技能を持つ150人を2023年度の「現代の名工」に選んだと発表し、本県からは電気めっき工の三沢孝夫さん(57)=山形市高原町、スズキハイテック事業開発課長=が選ばれた。

 表彰は1967(昭和42)年度に始まり、被表彰者は本年度を含め全国で7096人、本県では77人目。自動車部品や電子部品の表面処理を手がけるスズキハイテック(山形市、鈴木一徳社長)からは2人目の選出となる。表彰式は13日に東京都内のホテルで行われる。

 三沢さんは山形工業高出身。少年期から、物質の性質や色が変化する化学反応に興味があった。入社後にめっきの仕事の面白さを教えてくれたのは、当時技術部長で、1998年に現代の名工に選ばれた会田耕三さん(90)=同社監査役=だった。対象物の種類や水溶液の濃度など無限の組み合わせがある中、想定通りにうまくいくことに楽しさや喜びを感じた。

 30代で向き合ったのが、毒性の強い鉛を使わない「鉛フリー」の技術開発だ。「ビスマス」という金属を使うめっきの方式を確立し、大手半導体企業などの要求に応えた。自社の技術を売り出す開発主導・提案型企業へと会社が変革を進める中、医療用製品の開発でも責任者として成果を出した。山形大や県工業技術センターと連携し、携帯型吸入器のマイクロミスト発生用の金属メッシュ製作にも成功した。

 同社が外国人労働者を積極的に受け入れる中、国籍を問わず、人材育成にも尽くした。「とにかく自分で考えさせること」がモットーで、「若い社員の顔色が変わってくる瞬間がうれしい」と相好を崩した。

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