総菜パックにトカゲ、衣装ケースにリクガメ…エキゾチックアニマル展示即売会の実情【杉本彩のEva通信】

総菜パックに入れられた多数の爬虫類
体がまっすぐに出来ない食品パックに入れられた爬虫類
体の大きさと同じ容器に入れられ動けない亀

先日、当協会主催で「改正動物愛護管理法を考えるシンポジウム2023」を開催した。今年の8月から超党派議員連盟による、動物愛護管理法改正に向けたプロジェクトチームの会議が始まったことをきっかけに、多くの課題に向けそれぞれが抱く問題点を再度洗い出し、現実的かつ実効的な法改正にするためにはどうしたらよいかを、それぞれの視点から講師の皆さんにリレー形式で語っていただいた。今回はその中から、「PEACE命の搾取ではなく尊厳を」の東さちこさんのプレゼンからエキゾチックアニマルの展示即売会について紹介したい。

そもそもエキゾチックアニマルというのは、犬や猫、また牛や豚などの産業動物を除いた特殊な動物全般を総称した呼び名だ。中でも近年、爬虫類等の展示即売会が増加していて、北海道から九州に至る全国各地で、1日若しくは土日の2日間でイベントが開催されている。犬猫の移動販売同様、問題も多く、例えば多数の業者が各地から集まるため、おのずと動物に負担が掛かる長距離輸送が発生していたり、表示すべき項目(品種等名称、成長時の大きさ、雌雄、生年月日、生産地等)がきちんと表示されていないとか、また小さな容器に入れられ販売されているといったことが見られる。

多くの爬虫類は、何と、よくスーパーで見るサラダや焼きそばが入れられているような総菜パックに、体がまっすぐになれない状態で入れられている。それだけでなく体長や身幅とほぼ同じ大きさのプラスチックの衣装ケースに入れられている亀もいる。もちろん運動場所も運動時間もない。

会場に映し出された動画には、ストレスで狭いケージの中を行ったり来たりと常同行動(同じ行動を繰り返すこと)を起こしているミーアキャットやリスがいたり、外に出ようとしてプラスチックの衣装ケースや総菜パックや水槽の内側を前足でしきりにかいている爬虫類も多く見られた。猛禽類は、足に付けられたリーシュと呼ばれる係留紐を、くちばしでしきりに解こうとしていた。客に体を触られ嫌がって飛び立ってもリーシュで固定されているから逃げようがない。野生動物を積極的に客に抱かせることもあるそうだ。

問題はこれだけではない。多種多様な動物種が販売されることで、知識がなくても気楽に飼い始めることができ安易な飼育を認める風潮になる。それは飼育放棄にも直結する。またイベント会場の環境も問題だ。室温を爬虫類に合わせると暑すぎる動物もいるし、会場内のマイクの音声も非常にうるさく動物の福祉が全く守られていない。

どの動物にももともと生まれ育った環境がある。そこはあらゆる動物種にとって完璧な環境だ。これまで長きに渡り置かれたその環境に順応しながら進化し、サバイバルを成功例にして繁殖もし、そこに定着してきたその場所がその動物にとって一番パーフェクトな環境なのだ。

最適な食と環境の提供、心理面の配慮や本来やりたいことが実現できているか、それらが果たして満たされているのか注意を払う必要がある。なのに人工的な明かりとそれぞれの個体に合わない温湿度、本来それぞれの動物が実現したい行動欲求も叶わず狭いケースに閉じ込め、どういう環境下に置かれるか分からない人間に買われていくのだ。

昨今、肉食の大型トカゲが住宅地で脱走する事件も多く、噛まれたり爪で引っかかれたりする危険性もあることから、大きく報道され世間の注目を集めている。その動物の安全はもちろんのこと、周囲の住民への配慮や飼育の責任と注意が必要だ。

イギリスでは、市場などでの飼育動物の取引は、1951年の「ペット動物法」により禁止された。一時的で間に合わせの環境では動物福祉を確保できないことが禁止の理由だ。ペット動物法第2条の内容は「ペットを路上で販売してはならない。道路、公共の場所、マーケットの屋台、もしくは手押し車で動物をペットとして販売する業を行う者は罪となる。」この法律によりビジネス目的での展示即売会の開催はできないため、これまで開催されてきた爬虫類の展示即売会もなくなりつつあるとのことだ。

次期法改正に向けて、当協会Evaも共に提案していきたい。このような事業を行う場合、第一種動物取扱業の登録が必要なのだが、それにはこうしたイベント会場や駐車場、公園等での登録禁止を明文化し、常設の事業所住所以外での登録を禁止する。また行政の立入りで現地確認ができてからでないと登録番号が出ないようにするため登録時及び更新時の立入りの義務化を進める。またイベント主催者名義等の登録は不可とし、実際に動物を取り扱う事業者ごとの登録の義務化を進める。また施設への導入後、取り扱う動物の検疫期間を2週間設けるなど実効的な改正が必要だ。

「STAND UP FOR ANIMALS」

そうじゃないと今後もエキゾチックアニマルの悲劇は終わらない。

※Eva公式ホームページやYoutubeのEvaチャンネルでも、さまざまな動物の話題を紹介しています。

⇒「杉本彩のEva通信」をもっと読む

  × × ×

「杉本彩のEva通信」は、動物環境・福祉協会Eva代表理事の杉本彩さんとスタッフによるコラム。動物福祉の視点から人と動物が幸せに共生できる社会の実現について考えます。今回のEva通信は、杉本さんと共に日頃活動している松井事務局長が執筆しました。

© 株式会社福井新聞社