浄水場の産廃が変身! 生ゴミもWで減らせる「せとうちコンポスト」 熟練技術者の技で誕生 「無印良品」でも販売され好評

覚えていますか? 半年ほど前のあのビッグイベントを…。

記者レポート
「G7サミットの際に国際メディアセンターで出た生ゴミが、みごとに堆肥になり、きょうからここで新たな命を育みます」

生ゴミを堆肥化する取り組みはさまざまありますが、広島生まれのダブルでゴミを減らす仕組み「せとうちコンポスト」。

注目は、もともとは浄水場の産業廃棄物とされていた泥からできた「土壌改良材」。そこには、半世紀近く水の仕事に携わった職人の技がありました。

今、広島から全国に広まりつつあるというゴミを減らす仕組みとは。

※SDGs17のゴールで11・12・17に該当
11:住み続けられるまちづくりを
12:つくる責任つかう責任
17 : パートナーシップで目標を達成

G7広島サミットの生ゴミが「堆肥」に変身!

6日、西広島駅前の広場・コイプレイスに運び込まれたのは、G7サミットの時に出た生ゴミから生まれた堆肥です。

pH値を計ってみると、ほぼ中性ながら、バッグによってばらつきがありました。

庭能花園 着能松太郎 代表
「たぶん中に入れている野菜くずとか皮の影響でpH値が若干変わってくるんだと思うんですけど、それっておもしろいなと思って」

― 個性的な土が作れる?
「そうですね」

堆肥は、プロの手で「ブルーベリー用」と「コーヒー用」の土に配合され、これから新しい命を育む土台となりました。

コンポストに入っているのは、すべて広島県内でできたものです。「安芸太田町の葦」、「三次市のもみ殻くん炭」、そしてこの砂利石のように見える 「瀬織(せおり)」と名付けられた「土壌改良材」です。

生原商店 生原誠之 代表
「空気中、水中、土の中にある微生物が、より集まってくるような、そういう資材なので、わかりやすく言えば『微生物のおうち』のようなものなんですよね。なのでこういうコンポストの中で混ぜると、微生物が環境を作ってくれる。サポート役としてすごく適した資材になっています」

廃棄されていた浄水場の泥が「宝の泥」に

土壌改良材の「瀬織」が生まれるのは、三次市の向江田浄水場です。

川の水をろ過して水道水にする過程で出るミネラルや有機物、微生物がたっぷり含まれた泥は、これまで「産業廃棄物」として、年間200~250トンほど廃棄されていたそうです。

徳本製作所 徳本和義 代表
「ミネラルが多いから、干してまいてもすごくいい栄養があるんですよ」

徳本和義さんは、もともと広島県の技術者として工業用水の仕事に携わり、その後は下水を担当。さらには広島をはじめ全国60か所の浄水場で35年間働いてきました。

各地の課題解決に取り組む中で、この泥の価値に気付き、再利用できる仕組み作りを進めてきました。

天日でじっくりとカラカラに乾燥させることで、泥は、微細な穴の空いた軽石のような状態となり、当初は水槽の水質改善材として注目されました。

徳本製作所 徳本和義 代表
「それの中にはミネラルが入っとるわけよ。そのミネラルのところへまず微生物が住み着いて、メダカさんでもコイでもオシッコしたらアンモニアが出る。それをみんな取ってくれるんですよ。それで価値が出てきたんやね」

年間14万トンの産廃がゼロに!? 「すごく可能性を感じる」

3年前、生原さんはこの徳本さんの技術に注目し「瀬織」を開発。「産業廃棄物」として捨てられていた泥は、今では土壌改良材やコンポストの基材として全国で利用されています。

生原商店 生原誠之 代表
「瀬織は、天然のものに近いというか、自然のものなので、実は掛け合わせることによって、いろんな商品開発ができるなっていうのをぼくは感じているんですよ。すごく可能性を感じるんですよね」

徳本製作所 徳本和義 代表
― どんな気持ちですか?
「そりゃうれしいですよ。ほいじゃが、あまり喜んで威張っちゃいけんの」

最新の水道統計によりますと、「瀬織」の元になる泥を排出している浄水場は、全国でおよそ2200か所。そのうち600か所余りでこの乾燥方法が可能です。

「瀬織」作りの技術が水平展開されれば、年間14万トンの産業廃棄物をゼロに近づけることも夢ではありません。

生原商店 生原誠之 代表
「徳本さんは、この技術を提案した場所はいっぱいあるんですよ。北海道でもされてましたよね? それでその周りにある浄水場も気付く方が気付いていけばいいんじゃないかって」

「無印良品」で販売 特に子どものいる家庭に好評

この「瀬織」が使われた「せとうちコンポスト」は3年前から広島の無印良品(広島アルパーク・広島パルコ・ゆめタウン東広島の3店舗)で扱われています。特に子どものいる家庭に好評だそうです。

無印良品 広島アルパーク 山口慶介 さん
「やっぱり食事って毎日作りますし、生ゴミって毎日出るんですけど、それを子どもたちと楽しみながら、環境に対して取り組めてるっていうところで、すごくいいみたいですね」

今月からは、新しく杉の間伐材でできた組み立て式のコンポストも扱われることになりました。(注文生産)

生原商店 生原誠之 代表
「だからゴミというよりは、徳本さんがよく言うのは、『三次の宝』『広島の宝にしたい』ってずっと言うんですよ。車の中でもずっと言っています。もう耳にタコができるくらい。『そりゃそうだよね』って思いますよね」

広島の川から運ばれた恵で、生ゴミが土を助けて、新しく植物を育てる。そんな小さな循環の輪が、今、全国に広がっています。

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