映画「首」公開、撮影監督の第一人者・浜田毅氏に聞く 北野武監督との初タッグに「ワクワク感」見所語る

北野武監督の最新作映画「首」が23日、全国公開される。“世界のキタノ”として海外で評価される要因の一つとして、かつて「キタノ・ブルー」と評された映像美が挙げられるが、その部分での重責を担う撮影監督として第32、37回日本アカデミー賞最優秀撮影賞を獲得した第一人者で、日本映画撮影監督協会理事長でもある浜田毅氏が今作で北野監督と初タッグを組んだ。日本を代表する映画カメラマンの浜田氏が映画公開を前に、よろず~ニュースの取材に対して心境を明かし、12月に開催される同氏のトークイベント主催者にも話を聞いた。

浜田氏は1951年生まれで、83年に森崎東監督の「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」で撮影監督デビュー。崔洋一監督とは「友よ、静かに瞑れ」から「血と骨」まで6本、滝田洋二郎監督とは米アカデミー賞外国語映画賞を獲得した「おくりびと」(08年)など9本、森崎監督とは遺作の「ペコロスの母に会いに行く」(13年)まで4本と、盟友監督と複数の作品を残したほか、深作欣二監督の「いつかギラギラする日」(92年)、井筒和幸監督の「岸和田少年愚連隊」(96年)、など日本映画史に残る数々の名作や話題作の撮影を手掛けた。

今年は撮影監督デビュー40周年。浜田氏はその記念すべき年に公開される「首」について「規模の大きさによるプレッシャーはあまり感じないのですが、北野武監督と仕事ができるワクワク感はありました」と振り返る。さらに、浜田氏は「仕掛けの大きい中での揺るぎない北野映画の世界を楽しんでもらいたいと思います。私たちの仕事は環境と世界を作る事で、北野監督がその中で面白がって遊んでくれたら最高と思います。少しはできたかなと思っています」と語った。

その浜田氏のトークイベントは12月2日に東京・新宿の「VILLENT新宿202会議室」で開催。映画監督で作家の山本俊輔氏とライターの佐藤洋笑氏が司会を務める。両氏は「映画監督 村川透 和製ハードボイルドを作った男」や「キャメラを抱いて走れ!撮影監督仙元誠三」といった映画書籍の共著者。前回のイベント企画では北野組の名カメラマン・柳島克己氏が登壇したが、今回は浜田氏の〝登板〟となる。第一部では先輩カメラマンの仙元誠三氏、86年のテレビ第1シリーズと98年のテレビスペシャル版を手掛けた「あぶない刑事」を中心に語り、第二部で「首」の撮影秘話を披露するという。

浜田氏とはどのような撮影監督なのか。山本氏は「まず、映画館の大スクリーンではえる、映画的な重みのある映像を撮れる撮影監督さんだと思います。深作欣二、崔洋一、滝田洋二郎といった数多の巨匠監督と仕事をしてこられて、その『格』を表現できる映像を撮ることができる方だと。現代劇・時代劇問わず柔軟に対応できるのは、若き日に三船プロダクションで助手として培った基礎がしっかりしているからではないでしょうか」と解説した。

そして、内容が注目される「首」を既に観た山本氏は「特に合戦シーンは大河ドラマで見るようなものより生々しくバイオレンスに満ちており、浜田さんが手掛けられた『壬生義士伝』(03年)での泥臭いチャンバラシーンを彷彿とさせます。また、これまでの北野作品は浜田さんの同期である柳島克己カメラマンが担当されてきましたが、今回は浜田さんとのコラボとなり、新しい北野作品の化学反応を楽しめるのではないでしょうか」と評した。

12月のイベントに向け、山本氏は「浜田さんの先輩カメラマンである仙元さんが紹介してくださったのが出会いのきっかけです。その後、17年に私が編著を担当した『セントラル・アーツ読本』(洋泉社)で浜田さんにインタビューさせていただきました。そのご縁から、今年になって浜田さんが『首』の撮影を担当されたことを知り、ぜひトークイベントを実現させたいと思いました。イベントでは、『首』はもちろん、浜田さんが若き日に参加された『あぶない刑事』や『いつかギラギラする日』など、根強い人気を誇るアクション作品についてもうかがいます。ぜひ、北野映画ファン、あぶ刑事ファン、アクション映画ファンの皆様のお越しをお待ちしております」とアピールした。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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