古民家から世界に挑戦 eスポーツチーム「バーニングコア」、滑川に移住し拠点開設

こけら落としのイベントで、ゲームの対戦を披露する大谷選手(左)やマイクを手に実況する立川選手ら=滑川市瀬羽町

 eスポーツの国内トップリーグに参戦しているプロゲーミングチーム「バーニングコア(BC)」(東京、堺谷陽平社長)が、活動拠点を東京から富山県滑川市瀬羽町に移した。築100年以上の伝統ある古民家を改修し、選手の練習の場や競技会場になるゲーミングベースと呼ばれる施設にした。一部選手やコーチらも移住する。滑川から国内外の舞台に挑戦するとともに、地域活性化に貢献したい考えだ。

 24日、BCと誘致した滑川市、まちづくり会社「TOYAMATO」が拠点の古民家で記者会見を開いて発表した。市とTOYAMATOは空き家の活用やスポーツ振興などで包括連携協定を結んでおり、誘致はその一環。県と市によるサテライトオフィス誘致事業を活用し、BCに今回の改修費や年間の賃料として最大520万円を補助する。

 古民家は30年以上空き家だった旧高木商店。内部はガラスで仕切られ、ゲームをする空間は6台のPCやモニターなどが並ぶ。観客が入れるスペースもあり、ガラス越しに試合を観戦するパブリックビューイング(PV)なども検討する。

 移転に合わせ、県外出身や海外出身の選手とコーチら8人ほどが、拠点近くの空き家だった古民家に移住する。チーム名を「バーニングコアトヤマ」に変え、現在は東京にある本社も将来、県内に移す計画だ。

 瀬羽町はかつて北陸街道の宿場町として栄えた旧町部にあり、国登録有形文化財の旧宮崎酒造などの建物が残る。近年、空き家を活用してカフェや雑貨店、古書店などの出店が相次ぎ、若者らが訪れる人気スポットになっている。

 記者会見で水野達夫市長は「瀬羽町をはじめ、旧町部は空き家が多くある。こうした活用は非常にうれしい」と述べた。改修を主導したTOYAMATOの青井茂代表取締役は「老若男女の縁をつないで街を活性化したい」と話した。

 こけら落としとして、BCの大谷元希(もとき)選手(26)=小矢部市出身=らが人気格闘ゲーム「ストリートファイター6」をプレーした。立川透選手(26)=同=は「誇れる場所になった。大会を開いて皆に来てもらいたい」と話した。

堺谷社長「地域に根差す」

 BCの堺谷社長は、取材に「eスポーツを通じた地域の活性化に向け、地域に根差したチームのモデルにしたい」と力を込めた。瀬羽町の関係者はチームの活躍と波及効果に期待する。

 堺谷社長はeスポーツ業界は今、転換期にあると言う。「注目を浴び、お金も動いた『バブル期』が終わり、競技の価値や社会貢献について再考する時期に来ている」とし、滑川市への移転を決めたと説明した。

 BCには、世界で人気の戦略ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」部門と格闘ゲーム「ストリートファイター」部門があり、今年は約10人の選手が所属した。BCは2018年から、LoLの国内トップリーグに参戦している。

 移住するのはLoLの選手らで、拠点から徒歩1分の古民家1軒で共同生活を送り、例年1月からの約8カ月間のリーグ戦に臨む。来月22日には、地域住民と来季リーグに出場する選手との交流会を開く予定だ。

 地元はBCを歓迎し、旧高木商店の所有者、金山彰夫さん(72)は「オリンピック競技にも検討される注目の競技で、協力したいと思った」と話す。近くの飲食店「ハレとケ」の鍋谷智子さんと川渕智子さんは見学に訪れ、鍋谷さんは「画期的な施設」、川渕さんは「瀬羽町を世界に発信できる。頑張ってほしい」とエールを送った。

活動拠点の移転への思いを語る堺谷社長

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