「ゼロ革命」の成果?楽天証券からSBI証券に移管する人が急増!背景にある心理

来年から始まる新NISA制度に先駆けてSBI証券は「ゼロ革命」と題して、ネット取引の顧客を対象にオンラインの国内株式売買手数料の無料化の実施を決定しました。約定代金にかかわらず、また現物取引・信用取引を問わず、恒久的に手数料を無料としています。この「ゼロ革命」を発表した今年の夏以降、SBI証券の新規口座開設件数が加速しています。決算発表時に公表された資料を見ると、7月との比較で9月時点の契約件数は+56.1%となり、圧倒的な進捗率を発表しました。


証券総合口座で国内初の1100万口座を突破

信用取引口座開設件数においても7月との比較で9月時点の契約件数は+277.1%で、「ゼロ革命」公表後、両口座ともに過去最高件数となりました。これをきっかけにSBIグループの口座開設は証券総合口座で国内初の1100万口座を突破するに至りました。同社は売買手数料無料化の構想を2019年6月に発表して以降、計画的に「ゼロ革命」を推し進めてきました。様々な企業努力が稔り、「ゼロ革命」後、他社から変更してくる顧客が増加しています。

2022年4月時点→2023年9月時点で楽天証券からSBI証券に入庫した件数は5.9倍(出庫件数は1.9倍)、野村証券からは入庫9.3倍、(出庫1.6倍)、大和証券からは入庫9.8倍、(出庫2.1倍)となっていて、数字が表すとおり、顧客がよりメリットを感じる方へと動いている事が伺えます。創業以来、顧客中心主義を貫いており、それが奏功したと同社は分析しています。

1人に付き1口座のみの開設となるNISA口座の新規開設件数においても、今年7月時点で8万2245件が10月は13万8249件(+5万円6004件、7月比+68.1%)、他社からの変更が7月時点で7,278件が10月は5万9,784件(+5万2,506件、7月比+721.4%)で、そのうち楽天証券からの変更が51.6%で約半数を占めています。

楽天証券にないメリットを感じる人が多い?

この数字を見て、特に楽天証券からの変更件数の多さに驚きました。2社を比較するとポイント制度の多さはSBIが有利です。またNISA口座によるIPO(新規公開株)の取り扱いが楽天証券にはない、投資信託の売却に手数料がかかる、などSBI証券が有利に感じる方が多いのかもしれません。楽天はポイントを楽天ポイントでしか受け取れないなど、SBI証券と比較すると見劣りする点があるのは否めません。しかし多くの方が楽天証券からSBI証券に移動してくる背景には、お得感ばかりではなく、安心感があるからではないかと思います。個人が多額のお金を預ける先は不安定さを極力感じない所が良いと誰もが思うはずです。

9月22日、SBI証券は「ゼロ革命」第二弾となる新NISAにおける米国個別株や海外ETF(米国・中国・韓国・シンガポール)の売買手数料無料化を発表しました。これにより更なる新規NISA口座獲得を狙っています。

一社強豪には懸念も…

ここまで他社を引き離すSBI証券の着実な成長には驚かされますが、一社強豪の現実には多少の懸念があります。企業には、つばぜり合いをするライバルの存在が必要不可欠だと思います。独走状態になると、どうしてもその先の成長が鈍化したり、いわゆる殿様商売になる可能性が高いからです。多くの個人投資家の為にも追随する証券会社が登場してくる事を願っています。

また、対面営業の良さもあると思います。人間である以上、会話は必須と感じます。証券会社の営業マンと会話をする事で新たな発見などもあるのではないでしょうか?

流行に踊らされすぎないように…

これまでも何度かお伝えしてきましたが、近年、日本では倹約の伝統が台頭して銀行などの金融機関で貯蓄をする人々が多く存在します。現在もその様な考えの方が多数いらっしゃいます。「お金を増やす」という考えそのものに抵抗がある年齢層の方も多く、約20年前から株のネット取引が可能になったものの、株式投資はなかなか浸透しにくい面があったように思います。ようやく、今年の6月、岸田総理が「資産所得倍増元年」「貯蓄から投資へ」のシフトを推し進めた事で一気に流れが変わった印象です。

まだ株式投資そのものにためらいを感じたり、どの程度を投資にまわすべきなのか、と疑問を感じエンジンがかからない方も多くいらっしゃるのではないかと思います。証券ディーラーを生業としていた私からすると、そんなに簡単に資産がプラスになるとは思えません。市場には海外投資家を始め、ベテランの方々が大勢存在しています。現在、日本市場において個人投資家は約18%に過ぎませんので、大きな波になる事はなかなか難しいです。約30年余り日本市場に携わっている私ですが、簡単にプラスは出せませんし、損切りは日常茶飯事です。でもそれが株式相場です。投資は自己判断です。政府が有利な制度を発表したから、流行だから、と安易に行うものではありません。失っても後悔のない金額で始めるくらいが丁度良いと思う次第です。

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