きょうから締約国会議

 遅くなってごめん。もちろん、デートや飲み会の遅刻をわびるような軽い調子では済むまい。でも、まだ今なら、きっと皆が歓迎してくれる。ああ、やっと来たね、あなたが来ないと始まらない…。だから、その一歩を-と何度も何度も書いてきたのだ▲核兵器禁止条約の第2回締約国会議が間もなくニューヨークで始まる。だが、そこに日本政府の姿はない。核兵器使用の非人道性を誰よりもどこの国よりも深く、身をもって知るはずの「唯一の戦争被爆国」の政府だ▲〈核使用の危機がかつてない現実味を帯びている〉-それが世界の核状況を言う定型句になってしまった。名前を書くのも嫌だ、ロシアの大統領が核の威嚇を繰り返し、パレスチナの戦闘ではイスラエルの閣僚が核爆弾の使用を選択肢だと語った▲〈核兵器国が一カ国も参加していない。条約は実効性が乏しい〉-それがこの条約に対する日本の首相や政府の一貫した見解だ。だが、それは“評論家”の言うこと▲条約のここが足りない、そこがダメと語る暇があるなら「実効性」を高めるための行動を起こすべきではないのか。問いたい。被爆国の不参加が「乏しさ」の一因をつくっている自覚はあるか▲遅刻にも限度はある。今ごろ何しに来たの-。世界の冷たい視線は想像するだけで怖い。(智)

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