住宅ローン、固定金利と変動金利はどのような影響を受ける? 【長期金利】のしくみ

前回、期間1年未満のお金の貸し借りに適用される「短期金利」について解説しました。今回は1年以上のお金の貸し借りに適用される「長期金利」です。

前回記事: 預金や住宅ローンに影響はある?知っておきたい【短期金利】のしくみ


長期金利の指標は「10年国債利回り」

長期金利は、短期金利に比べてお金の貸し借りの期間が長いものに適用される金利のことです。

短期金利の指標的な存在として、「無担保コール翌日物金利」があります。前回も触れましたが、これは銀行同士が1日間という超短期の資金を融通する際に適用される金利であるのと同時に、日銀が金融政策を行う際の誘導目標として用いられている政策金利でもあります。

長期金利の指標となるのは、「10年国債利回り」です。10年国債とはその名の通り、償還までの期間が10年の国債で、発行された後は債券市場で自由に売買されます。この売買で形成される利回りが10年国債利回りで、長期金利の指標とされます。

たとえば額面100円、利率1%の10年国債が新規発行されたとしましょう。この債券を保有すると、毎年100円に対して1%、つまり1円の利子を得ることができます。

利率と利回り

新規発行された後、債券市場で売買されますが、その時は額面100円、利率1%の10年国債ならいくらで買うかを示す「債券価格」で取引されます。

仮に近い将来、金利が上昇しそうだとなったら、1%の利率しか得られないこの国債の魅力は後退し、債券市場で売られます。結果、額面100円に対する債券価格は99円70銭、99円50銭というように下がっていきます。

仮に99円50銭まで下がったとします。この債券を償還まで保有すれば、額面100円につき50銭の償還差益が得られます。なぜなら債券は、償還する時には額面価格で償還金が支払われるからです。そのため、利子に償還差益を加味したものが、この10年国債に投資した時の最終的な収益になります。

計算してみましょう。償還までの残存期間が9年だとしたら、50銭を9年で割り、1年あたりで得られる償還差益は6銭になります。

また1年で得られる利子は1円なので、償還差益の6円と合計すると、1年の収益は1円6銭となります。これを購入した際の債券価格である99円50銭で割ると、1.100%という利回りが求められます。

このように債券には、

1. 額面価格に対して、毎年得られる利子がいくらになるのかを示す「利率」
2. 償還差益なども加味して、その債券を償還まで保有した時の最終的な収益率を示す「利回り」

という2つの収益性を示すものがあって、このうち一般的に「長期金利」とは、10年国債の「利率」ではなく「利回り」を指しています。

固定金利型住宅ローンの金利は引き上げに

前述したように、短期金利の指標となる無担保コール翌日物金利は、日銀が政策意図を持って、一定の水準に誘導しています。だからこそ「政策金利」なのですが、長期金利は基本的に、債券市場における投資家の需給関係によって、その水準が決まります。本来は自由に動くものなのです。

ところが、前回も触れたように、日銀は2016年9月からYCC(イールドカーブ・コントロール)を導入して、長期金利も誘導対象にしました。長期金利が誘導目標を超えて上昇しそうになった時は、日銀が長期国債を買い入れて、長期金利の上昇を抑えるという金融緩和政策を行ったのです。

そして現在、日銀はYCCの変動幅を拡大し、許容上限を引き上げています。当初、0%としていた変動上限を、1%超えも容認するようになりました。ここ直近、長期金利が上昇傾向をたどっていたのは、こういう事情があったからです。

長期金利が上昇すると、住宅ローンにどのような影響が生じるのでしょうか。実は変動金利型住宅ローンに関しては、短期金利を指標にして決めているので、現状、マイナス金利を継続している段階では、変動金利型住宅ローンの金利は上昇しませんし、YCC見直しの影響も受けません。

ただ、固定金利型住宅ローンは長期金利を指標にしているため、YCCの見直しと、長期金利の上昇による影響は不可避です。実際、大手銀行は年明け1月から10年固定金利型住宅ローンの金利引き上げを発表しました。

金利上昇局面の借入は固定金利型が有利

ただ、これは固定金利型の良さなのですが、基本的に固定金利型は決められた借入期間中にどれだけ長期金利が上昇したとしても、借入金利は上昇しません。だから固定金利なのです。

もちろん、新たに借り入れる場合は、新規融資の利率が上昇しますが、すでに固定金利で借りている場合は、借入期間が終わるまで、借り入れた時の融資利率が継続するのです。

したがって今後、金利上昇が見込まれる時には、固定金利型住宅ローンで借り入れた方が、その後、金利が上昇しても返済額は増えずに済みます。特に住宅ローンのように、総額が大きな借入を行う場合、0.1%の金利上昇でもトータルの返済額は大きく変わってくるので、注意が必要です。

逆に、金利が低下していく局面では、変動金利型住宅ローンの方が、金利低下と共に返済額が減るというメリットを享受できます。

© 株式会社マネーフォワード