原爆投下に至る歴史展示 長崎原爆資料館リニューアル 基本計画素案判明

 長崎市が2025年度に予定している長崎原爆資料館(平野町)のリニューアルに向け、本年度中に市が策定する基本計画の素案が28日判明した。過去の日本の戦争責任を巡り、市民団体などから意見が相次いでいる「原爆投下に至る歴史」の展示内容について、「日本の過去の戦争と世界との関係」などを柱とすることが分かった。より具体的な内容は来年度の設計段階で詰めるとみられる。
 館内の年表には旧日本軍による「南京大虐殺」の表記があり、保守系団体から表現修正を求める意見がある。一方で、市に対し、日本の戦争加害責任に関する展示を維持するよう求める要望書も市民団体からたびたび提出されている。
 今年7月以降、核情勢や歴史などの専門家でつくる同館運営審議会小委員会が、「原爆投下に至る歴史」など五つの論点でリニューアルの方向性を計4回議論してきた。
 複数の関係者によると、素案は歴史展示に関する方針について、小委員会が示した方向性を踏襲し、「戦争の被害と加害の両方を多角的な視点から考えられるよう客観的事実に基づいた展示」などを目指す。展示の主な内容として▽国際的な不戦条約に反して日中戦争などに突入した日本による「平和思想の後退」など、多角的視点での解説▽原爆の開発や使用決定の経過-などが盛り込まれている。
 この他、スペース不足や多言語化などに対応するためスマートフォンなどと展示物を組み合わせるなど、デジタル技術活用を検討。来館者が感想などを残し、他の人も閲覧できる双方向型コミュニケーションツールの設置や、周辺の被爆遺構や平和団体との連携充実を目指す。素案の全体像は30日の運営審議会の会合で公表される予定。

© 株式会社長崎新聞社