社説:杉田氏差別発言 国会議員の資格あるか

 自民党の杉田水脈衆院議員がアイヌ民族や在日コリアンに対する差別発言を続けている。

 インターネットへの投稿を法務局に「人権侵犯」と認定されたが、反省するどころか、さらなる差別発言と自己正当化を繰り返している。

 杉田氏は過去にも性的少数者や性暴力被害者への差別発言を行っている。

 差別をあおり、社会の分断を深める人物には、国会議員の資格はない。

 杉田氏は2016年、アイヌや在日コリアンの女性を「民族衣装のコスプレおばさん」と侮辱する投稿をネットに書き込んだ。女性らは札幌と大阪の法務局に人権救済を求め、両法務局は杉田氏に「啓発」を行った。

 しかし杉田氏はその後も、アイヌや在日コリアンをめぐって「特権がある」などと、事実に反する発言を動画サイトに投稿し、交流サイト(SNS)には、ヘイト発言との批判にも、言論の自由の範囲内、と投稿している。

 特定の民族や集団を敵視し憎悪をあおる「ヘイトスピーチ」は憎悪犯罪につながる恐れがあり、放置すれば社会全体にとって大きなリスクになる。

 21年に宇治市のウトロ地区であった放火事件で有罪判決が確定した男は「在日コリアンは日本人より優遇されている」という誤ったネット情報をもとに犯行に及んだと話した。

 杉田氏の発言も荒唐無稽と看過、放置することは危険である。

 深刻なのは、自民党が杉田氏の発言を問題視せず、役職につけるなど、重用していることだ。

 自民党総裁でもある岸田文雄首相は国会で問われ、「(差別的投稿ついて)本人が謝罪し取り消した」と問題視しない姿勢を見せた。杉田氏を支持する一部の「保守」層に配慮する姿勢が目に余る。ヘイトを容認する立場に政権や党が立つと見られても仕方がないのではないか。

 杉田氏は自身に好意的なネット番組には積極的に出演する一方、一般のメディアから記者会見を求められても応じようとしない。

 自らを強く支持する層にしか説明できないなら国会議員とはいえまい。

 人権救済は非公表だが、被害者は名誉回復のため自ら経緯を公表した。杉田氏はこれを問題視しているが、そもそも問題の発端は杉田氏の差別投稿にある。被害者への批判は筋違いだ。法務局も名誉回復を支援する必要があろう。

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