蔵王山のアオモリトドマツ、ガ幼虫食害ほぼ収束 山形、宮城の関係者が検討会

 山形、宮城両県の関係者が、蔵王山の樹氷を形成するアオモリトドマツの枯死問題について対応などを協議する検討会が29日、山形市の山形国際交流プラザで開かれた。2021年に拡大したガの幼虫の食害がほぼ収束したとみられることなどが報告され、被害動向を継続して注視しつつ、樹氷再生に向けた取り組みへの注力を確認した。

 蔵王山では13年ごろに「トウヒツヅリヒメハマキ」が大発生して葉を食い荒らし、枯死が急激に拡大した。21年にも広範囲で食害が見つかり、被害の再拡大が懸念されていた。検討会では、山形森林管理署の担当者が、7~10月に蔵王ロープウェイ山頂線沿いや樹氷高原駅周辺を目視で調べた結果、昨年に比べて食害で褐色に変わった葉が少なかったと報告。宮城県側の調査でもガの個体数減少が示された。

 キクイムシの被害も小康状態とされた一方、樹勢の衰えや冠雪の影響とみられる倒伏、樹幹の折れが確認されたという。キクイムシを撃退するために出すヤニが出ている木も数本みられた。現在は枯死したアオモリトドマツに雪氷が付着しているが、枝が折れるなどの樹形の変化で、数年後には樹氷が形成されなくなる可能性も示唆した。

 枯死が深刻な地蔵山頂駅付近で、山形新聞、山形放送の8大事業「みどりの学び 蔵王樹氷再生プロジェクト」などの取り組みで移植された自生稚樹は計191本に達し、15本が枯死したが、おおむね順調に生育しているとした。周辺に生い茂るササを刈り払う有効性の検証などを行い、成長を促す環境構築を図る。

 東北森林管理局の唐沢智森林整備部長は「被害は落ち着いているものの、引き続き注視する必要がある。関係者の知見を集約し、再生に力を注ぐ」と話した。

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