消防訓練、よりリアルに 県内事業所「劇場型」から「ブラインド型」へ

より実際の火災に近い状況で対応を確認したブラインド型の訓練=東根市・ひがしねこども園

 県内の事業所などで義務付けられている消防訓練で、「劇場型」から「ブラインド型」に移行する動きが広がっている。ブラインド型は、想定状況を決めた劇場型とは異なり、初期消火などの役割も決めず、突発的な火災を疑似体験することで、非常時の対応をよりリアルに学ぶことができる。県内では東根市消防本部が先駆的に推奨し、酒田地区広域行政組合消防本部も本年度から始めている。

 白煙に見立てた水蒸気を使った無害のウオータースモークが充満し、火災報知機が鳴り響く。備え付けの消火ホースを取り出したが、火元まで届かないという不測の事態―。10月上旬、東根市のひがしねこども園(結城美紀園長)での訓練での光景だ。保育士は園児を抱え、手をつなぎ、足早に避難した。

 「初期消火は失敗」。立ち会った東根市消防本部の担当者はこう判定した。火元とした場所に近いホースに気付けなかったことなどが原因だ。土田直美副園長は「自分がやるしかないという一心だった。各ホースの場所までは分からなかった」と話した。職員に事前に知らされていたのは訓練での出火時間のみ。出火場所や、初期消火などの役割分担、避難誘導などはあらかじめ決めないのがブラインド型だ。シナリオ通りに訓練を進める従来の劇場型と異なり、ブラインド型は失敗も含め、課題を抽出し、実際の火災に備え、レベルアップを図る。

 同消防本部によると、不特定多数の人が出入りする店舗や施設の「特定用途防火対象物」は年2回以上、特定の人の出入りが主体の工場や学校などの「非特定用途防火対象物」は年1回以上の訓練が義務付けられている。同消防本部管内で訓練が必要な約200の事業所は、ほぼブラインド型に切り替えている。同消防本部はより実際に近い訓練を目指し、2018年から推奨してきた。担当者は「いずれは訓練の出火時間を告知しないでも対応できるよう、レベルアップしてもらいたい」と話す。

 こうした取り組みを参考に、酒田地区広域行政組合消防本部管内でも本年度から、ブラインド型訓練を取り入れている事業所がある。このうち、アライドマテリアル酒田製作所(酒田市)は7月に実施した。点呼や要救護者の搬送に従業員が取り組んだ。同社の担当者は「大規模火災を振り返ると、訓練がいかに大切かが分かる。来年以降もブラインド型の訓練を続ける」と話した。

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