再来年の入学、早くも商戦 ランドセルで県内企業

色や形が豊富なランドセル。商戦が年々早まっている=富山市内のランドセルメーカー

  ●予約開始、対応に追われ

 ランドセル商戦が年々早まっている。富山県を含む全国のランドセルメーカーは、2025年春に入学する年中児を対象にした製品カタログの予約受付を始めており、製品の注文を12月から受ける企業もある。色や形、機能が多様化し、好みの品が売り切れる前に保護者が購入に動いているとみられる。富山のメーカーは、少子化で限られた顧客を逃すまいと対応に追われている。

 小学校入学前の子どもの保護者がランドセル購入に向けてカタログを取り寄せたり、展示会に出向いたりする活動は「ラン活」と呼ばれ、年々、前倒し傾向にある。ランドセルメーカーのハシモト(富山市)は25年春用の製品カタログ受付を今年8月、早くも始めた。保護者らは夏ごろからじっくりと商品を品定めし、同社は来年2月から購入予約を開始する。

 橋本明彩代(あさよ)取締役は、他社ではさらに前倒して12月から予約を受け付けるケースもあると指摘。「うちもさらに早めたいが、デザインの決定や見本商品の生産体制が追い付かない」と過熱する商戦にもどかしさを募らせる。

 橋本さんは、商戦が早まっている要因の一つとして、SNS(交流サイト)を挙げる。「今は母親がSNSで情報をキャッチする。昔と比べて商品の販売状況やラインアップの情報が、早く行き渡るようになった」と語る。

 全国のランドセルメーカーが加盟する日本鞄協会ランドセル工業会の調査によると、保護者がランドセル購入を検討し始めた時期について「購入の前々年の12月以前」と回答した人の比率は2018年が8.3%だったが、23年は14.2%に上昇している。

 「早い人は子どもがまだ年中児の夏に下見に来る」と話すのは黒川鞄(富山市)の黒川由朗社長。同社では天然素材の牛革や馬革を使ったランドセルが首都圏で人気を集める。職人の数や原材料に限りがあり、大量生産できないため、買い遅れを恐れる保護者が早々に富山まで足を伸ばして商品を選ぶという。

 同社は11月下旬に東京で25年春入学向けの商品発表会を開いた。黒川社長は「正直、時期は早いと思うが他社の動向をみると、うちも動かざるを得ない」と強調した。

© 株式会社北國新聞社