伝統漁から製造まで からすみづくり進む 五島・富江 馬場さん方

天日干しして乾燥させるからすみ=五島市富江町、馬場さん方

 旧富江藩の将軍家献上品に使われるなど、江戸時代から高級珍味からすみの製造をしている五島市富江町小島で、年末年始の贈答用として作業が進んでいる。
 同地区では、原料になるボラの漁やからすみづくりが数百年以上前から受け継がれている。現在は担い手が減り、漁師の馬場直也さん(54)が漁から製造までの工程を行う全国でも珍しい生産者という。
 漁期は10月10日から1カ月間。近海で回遊する群れを囲むように網を入れて竹ざおで海面をたたきつけ、網に追い込む伝統の「囲い刺し網漁」をしている。近年不漁が続いたが、今年の漁獲は昨年より3割ほど増えた。
 水揚げ後、ボラから取り出して塩漬けした卵巣の塩を抜き、形を整えて並べる。2週間ほど、裏返しを繰り返しながら天日干し。表面を丁寧に拭いて乾燥させるとあめ色になる。特産のつばき油を塗ってつやを出し仕上げる。
 弟の満秀さんや直也さんの長男、郁也さんと今月下旬まで作業は続き、市内外の海産物店などに出荷するほか、個人の予約客に販売する。直也さんは「暖かい日が続いたが、だいぶ仕上がってきた。楽しみにしているお客さんに届けたい」と話した。

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