「ヒートショック」栃木県民は要注意? 脳卒中や心疾患の引き金にも...

ヒートショック対策を呼びかける県のチラシ=5日午前、県庁

 寒さが本格化する今後、急激な温度変化による血圧の変動で重篤な疾患を引き起こす「ヒートショック」の危険性が高まる。本県は脳卒中や心疾患の死亡率が全国に比べ高く、ヒートショックが引き金になる可能性もある。ヒートショックは朝晩と日中の寒暖差、住宅の寒さなどが要因とされ、栃木県は予防や啓発に力を入れている。専門家は家の中の温度差を小さくするなど、「リスク回避のため暮らし方の工夫を」と呼びかけている。

 矢板市の温泉施設「矢板温泉まことの湯」では1月、入浴客が気を失うなどし、月に3回119番した。大事には至らなかったが、今季も「冬場は特に注意が必要」と警戒する。脱衣所を暖房で暖め、かけ湯をしてから湯舟につかるよう推奨している。

 ヒートショックは暖かい部屋から寒い部屋への移動などが主な原因。脳卒中や心筋梗塞など生死にかかわる疾患に至る恐れがある。

 厚生労働省が1日に公表した2020年の都道府県別の年齢調整死亡率で、本県は脳血管疾患(脳卒中)が男性ワースト3位、女性ワースト4位。14年統計を基にした伊香賀俊治(いかがとしはる)慶應大教授の調査によると、本県の冬季死亡増加率はワースト1だった。

 県はこれらの要因の一つをヒートショックと捉え、対策をまとめたリーフレットを配布している。県健康増進課の担当者は本県の冬のリスクについて「朝の冷え込みが厳しい気候が一因ではないか」と分析する。

 住宅内の寒さを指摘する声もある。冬季の室温に関する伊香賀教授らの調査では、本県の在宅中の居間の平均室温は15.1度で、北海道(19.8度)より低く、世界保健機関が推奨する18度以上に届いていない。

 那須塩原市の工務店「セルシオ-ル」の槙秀高(まきひでたか)社長(51)の父は78歳の冬、自宅で脳梗塞となり、2年後に亡くなった。「寒さが引き金になったと思う。同じ経験をする人を減らしたい」と、寒さに強い高気密・高断熱住宅の普及に取り組んでいる。

 自治医大付属病院循環器センターの苅尾七臣(かりおかずおみ)センター長は、住宅内の温度差を「10度未満にするのが望ましい」と説明する。冷え込みやすい洗面所、脱衣所、トイレへでは注意が必要で、足元の冷えも血圧上昇の引き金になると指摘。日頃から血圧が高めな人や高齢者はリスクが高いとし、「就寝前や朝、血圧を測定し、健康状態を確認してほしい」と呼びかけている。

ヒートショックを防ぐ主なポイント

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