「炭にすれば100年ぐらいCO2を閉じ込められる」増加続ける荒れた茶園が切り札に!【SDGs】

静岡県の特産品のお茶。消費者の減少や後継者不足で厳しい状況にあるなかで、茶畑を救う新しい取り組みが始まっています。キーワードは、お茶の持つ二酸化炭素を取り込む力です。

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<河田太一平記者>
「牧之原市の茶畑です。後継者がいなくなり、荒れた茶畑が増えています。牧之原市では荒れてしまったお茶の木を使って畑を再生する取り組みが始まりました」

牧之原市内の元お茶畑があった場所。ここに撒かれているのは炭です。

<牧之原市お茶振興係 大石寛之係長>
「これ見てもらうと、バイオ炭。黒いやつ、元々茶の木だったもの」

栽培されなくなった茶の木で作った炭です。炭化装置を使い、1日かけて作られています。炭はお茶を栽培したことで酸性になった土を中和する働きがあるほか、土壌が変わる過程で発生する二酸化炭素の放出を抑える働きがあります。

<牧之原市お茶振興係 大石寛之係長>
「普通の木だとそのまま短時間で分解されるのに、炭にするとそれが100年くらいまでは炭素貯留される。二酸化炭素を閉じ込めるという感じ」

実は、お茶の木そのものに炭素をため込む力があることが最近、注目されています。静岡県茶業研究センターの研究によりますと、樹齢20年と40年の茶園で畝間の炭素の量を調べた結果、40年の茶園の方が、1ヘクタールあたり15トン多かったことが分かりました。

1年間では0.7トン。二酸化炭素の量に換算すると2.6トンとなり、県全体のお茶の栽培面積を考えると年間二酸化炭素3万5000トンをため込むことができることになります。

<静岡県茶業研究センター 白鳥克哉上席研究員>
「お茶の場合は一番茶が終わった5月に中切りといって、枝葉を刈り落す作業があります。数年に1回繰り返していくことで、一般の農地利用よりは茶園土壌には炭素が貯まりやすいという傾向が過去に報告されていますし、今回の調査でも確認された」

牧之原市や菊川市では、この茶園の炭素の蓄積機能を「J-クレジット制度」に利用しようと考えています。

「J-クレジット制度」とは、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入や適切な森林管理などによって削減・吸収された二酸化炭素の量を「クレジット」として国が認めると、大企業などに購入してもらうことができます。「J-クレジット制度」に登録されれば、農業とは別の収入源として茶農家の生活や活動を助けることが期待できます。

<牧之原市お茶振興係 大石寛之係長>
「これからの人たち、農業をやる人たちが上を向いてやれる作物に、お茶で稼げれば一番なんですけども、そうでないところについては二の矢、三の矢というふうな感じでやっていけたらと思っている」

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