ホンダから移籍の大湯「立川さんを追って、トヨタの顔になれるよう」。石浦も“起爆剤”と期待

 すでに12月6〜7日のスーパーフォーミュラ合同テストでP. MU/CERUMO・INGINGのマシンをドライブしていた大湯都史樹。テスト参加によりトヨタ移籍は確定的と見られていたが、2024年のVERTEX PARTNERS CERUMO・INGINGからのSF参戦、そしてTGR TEAM KeePer CERUMOから石浦宏明とコンビを組んでのスーパーGT・GT500クラス参戦が、12日の体制発表会でトヨタGAZOO Racingより正式発表された。

■“速さ以外の部分”も評価された

 大湯は2023シーズン、当初のホンダからの体制発表時にSFの参戦ラインアップに名前が記載されず、TGM Grand Prixから参戦を開始した後も「次があるか分からない」といった主旨の発言を繰り返し漏らしていて、実際に最終ラウンドには出場することができなかった。

 そんな経緯もあってか、12日の体制発表会では“スーパーGT、スーパーフォーミュラの両カテゴリーに参戦できること”に、とりわけ感謝の姿勢を見せていたのが印象的だった。

「こうして迎え入れていただいて、結果的に両カテゴリーへ同じ母体のチームから参戦という機会をいただいて……いろいろと未知な部分はあるのですが、いままでの自分も出しつつ、チームにもいろいろフィードバックできるようにしていきたいです」

 移籍加入が正式に発表されたためか、どこかすっきりとした表情でそう語る大湯だが、同時に“責任感”もにじませる。

「GTの方は立川祐路さんの後継という形で見られるとは思うので……数々の歴史を作ってきた“スター”の立川さんを追って、自分も同じ道というか、チームやトヨタの顔になれるようにやっていければいいと思いますし、見てくださる方を楽しませることができるように、面白いレースをしたいと思います」(※立川は引き続きチームの監督を務める)

 トヨタ陣営加入の話を進めるなかで、大湯自身は“速さ以外の部分”も評価されていると感じたという。

「自分の持ち味は速さだと思っているので、そこは高く評価していただいてたなと感じました。また、今季のレース結果は端的に言うとあまり世間の印象が良いものではなかったかもしれませんが、(トヨタは)そこを単純に“ダメ”ではなく、ひとつひとつ『このレースはこうだったよね』と、すごくよく見ていただいたと感じました。あとは僕のキャラクターの部分も認めていただいて。そこは本当にありがたいですね」

 先週のテストでドライブしたトヨタ/TCDエンジン搭載のスーパーフォーミュラSF23については、「運転するうえでの習熟は、ほぼ完璧にできているかと思います」と大湯。「それだけでなく、どうやったらより良くなるかという部分もフィードバックさせていただいたので、今後(トヨタ全体の開発に)活かせる部分もあるかと思います」と、すでに自らの習熟を超えた部分での貢献も始まっているようだ。

2023スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト 大湯都史樹(P.MU/CERUMO・INGING)

 GT500でドライブすることになるGRスープラの印象については、次のように語っている。

「総合的なパッケージとして(レベルが)高い。ストレートは充分に戦える速さを持っていますし、そことダウンフォースとの調和が取れているからタイムが出せるのでしょうし、そこは開発含めてうまくいっているのかな、と。SFで走ってみて、エンジンの特性などは把握することができたので、そこはGTに対しても活かせる部分はあるのではないかと思います」

 コンビを組む石浦は17歳年上となるが「すごくフレンドリーな性格でもありますし、僕のこともすごく気にかけてくださっています」と大湯は言う。

「まだそこまでコミュニケーションを取る機会が多いわけではないですが、そこはすごく伝わってきますし、石浦さんにはチームをまとめていく力がすごくあると感じます。そこについていきたい、という思いですね」

KeePer CERUMO GR Supraの2024年カラーリング。ここから細部が調整されるはずだ。

■「自分もすごく刺激を受けそう」と石浦

 一方、2015年のチーム加入以来、一貫して立川とコンビを組んできた石浦は、新たに迎え入れるドライバーが大湯になると知らされたときは「うれしかった」という。

 これまでライバルとして見ていた大湯の印象を聞くと、「えーっと……よくぶつかっているイメージ?(笑)」。

「それは冗談ですけど、ぶつかるときもセクターベスト、ベストでいってぶつかるとか、そういうところで速さを見せているのはドライバーとしてすごく魅力があるし、一緒に組むとなったら自分もすごく刺激を受けそうです」

「立川さんも『オレも若い頃はよくぶつかってたよ』みたいに言うので、立川さんと似てる部分もあるんじゃないかと、僕は勝手に思っています」

 誰もが認める速さを持つ大湯にはチームの“起爆剤”となることを期待していると、石浦は付け加える。

「一発の速さがある人はチームの雰囲気を良くできる力を持っているんじゃないか思います。僕も先輩になるので引っ張っていきたい気持ちもあるし、大湯の速さを起爆剤にしてほしいところもあります。セルモにとってはすごく大きなチャンスかなと思います。最初のテストが待ちきれないですね」

 立川の引退、異なるメーカーからの大湯の移籍加入、そしてメインスポンサーも変更と、さまざまな面で生まれ変わる2024年のセルモ。大きな注目が集まる新コンビが走り始める日が、とても楽しみだ。

『TGRドライバー勝ち抜きカートバトル!』での坪井翔と大湯都史樹のバトル

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