「強い台風の増加傾向は見られない」気象研究所が研究成果を発表 東京など太平洋側の接近頻度は増えているか 30年間のデータを再解析

気象庁の気象研究所は、12月13日、過去30年間の新たな台風データから「強い台風」の経年変化を調査し「増加傾向は見られないことがわかった」と発表しました。これまでの研究では、強い台風の増加傾向を示す評価がされていたことから、新たな知見となりそうです。

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気象研究所は、1987年から2016年までの30年間の台風について、気象衛星の画像による特徴的な雲パターンから中心位置や強度(中心気圧および最大風速)を推定する「ドボラック法」と呼ばれる手法で、新たにデータを解析しました。

10分間の最大風速が約48メートル(ハリケーンスケール・カテゴリー4相当)以上まで発達した強い台風の経年変化を調査したということです。

これまでの研究では、北西太平洋では、カテゴリー4〜5の強い台風が増えているとされてきました。しかし、年代によってデータの観測方法が違うことなどから、高い確信度の評価には至っていませんでした。そこで、気象庁は、過去に遡って気象衛星の画像を解析し、均質なデータを作成したのです。

再解析の結果では、強い台風の数は、年による変動が大きいものの、統計的に有意な変化傾向は見られなかったということです。また、1年間に発生した台風のうち、強い台風になる割合についても、変化傾向は見られなかったということです。つまり「強い台風の増加傾向は見られなかった」ということになります。

一方で、強い台風の発生位置はより西側に移動し、最大強度に達した時の位置はより北西側に移動していることがわかったということです。

これまでの研究では、東京など日本の太平洋側の地域では、強い台風が接近する頻度が増えているという結果が得られていましたが、こうした先行研究とも同じような結果であり、ある特定の地点や地域に注目した場合、全体の傾向とは異なる場合があることに注意が必要だとしています。

この研究の成果は、2023年10月4日付けで日本気象学会の国際科学誌に公開されています。

2022年9月、静岡県を直撃した台風15号では、1974年の「七夕豪雨」以来の大雨となり、静岡市清水区では大規模な浸水被害が発生しました。私たちには「台風による大雨災害が増えている」という実感がありますが、こうした感覚や実際の被害は、強い台風が発生する場所の違いにも関係があるのかも知れません。

気象研究所は、今回の研究成果は、30年間に限定した解析結果で、地球温暖化に伴う台風の長期変化を評価することは困難だとしています。私たちは、激しさを増す災害への備えを確実にしていかなければなりません。

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